鼻息荒い子

「苦手な字の練習」は逆効果。言語聴覚士学会での最新データから学んだ、発達性読み書き障害(ディスレクシア)への正しい支援

こんにちは、まのです。

前回の記事では学会発表(ポスター掲示)の裏側をお話ししましたが、今回はその続きです。

学会の中で僕が一番衝撃を受け「これはぜひ皆さんにお伝えしたい!」と思った、「発達性読み書き障害(ディスレクシア)」に関する教育講演について書いていきたいと思います。

ご講演されたのは、この分野で非常に著名な宇野彰先生だったんですが……冒頭の掴みからグッと引き込まれました。

「世の中に出回っている読み書き障害(学習障害)に関する情報、特にAIなんかで検索して出てくる情報の7割は間違っている」

……ほうほう、確かにAIはよく間違えますよねー、と最初はのんきに聞いていたんですが。

話を聞いているうちに、だんだんとこれは絶対聞かねばならないお話だと前のめりになっていきました。

というのも、その「間違っている7割」の中には、僕たち言語聴覚士(ST)ですら「これが定説だろう」とずっと信じ込んでいたものも含まれていたからです。
専門職として、常に最新の情報を疑いながらアップデートしていくことの重要性をガツンと思い知らされました。

今回は、その中でも特に「えっ、そうだったの!?」と僕が驚いたポイントを共有したいと思います。

STの常識が覆る? 音韻よりも大事なもの

幼児期のお子さんの読みの力を評価するとき、僕たちSTはよく「音韻(おんいん)の認知能力」というものを気にします。
例えば、しりとりが何歳くらいからできるかとか、「からす」という言葉がいくつの音からできているか分かるか、といった能力ですね。

ですが、先生のお話された最新データによると、「字が読めない原因は、音韻の能力が一番の問題とは言えない」ということが分かってきたそうなんです。

じゃあ何が一番影響しているのかというと、「自動化の能力(RAN課題)」と呼ばれるもの。
これは、文字を見た瞬間にパッと音に変換するプロセスのことなんですが、実はこっちの能力の方が、将来的な読みの成績に与える影響が大きかったんです。

実際には音韻と自動化能力も含めた、大きく分けて4つの能力について解説をされていましたが、それぞれに触れるとどうしても膨大な文量になってしまうので今回は割愛させてください。

ともかくこれまでは特に音韻に注目しがちでしたが、STとしては自動化の能力の弱さが隠れていないか、しっかり見ていく必要があるということを知る機会となりました。
自動化能力については昨今、取り上げられることも多い要素でしたがいよいよその占めるウェイトを大きくしていくべきなんだな…と感じました。

年長さんで字が読めなくても、焦らなくていい

もう一つ、とても重要だと思うお話がありました。

年長さんになってもひらがなが読めないお子さんがいると、親御さんとしては「うちの子、このままで大丈夫!?」とめちゃくちゃ焦っちゃいますよね。
統計的にもリスク児なんて呼ばれることがありますし。

でも、実際のデータでは
「小学校1年生の夏休みまで待ってから普通の練習を始めれば、9割以上の子が読み書きに不自由しないレベルまで向上した」
という結果が出ているというお話でした。

つまり、子どもの脳内でひらがなを読む準備(レディネス)が整う一番ふさわしい時期というのは、実は小1の夏休みだったりするんですよね。
(※さっきの「自動化の能力」に苦手さがある子には、もう少し早めのフォローがいる場合もあります)

なので、ただ単に「年長さんでまだ書けない・読めない」というだけなら、大人が過剰に心配して無理にトレーニングを急がせる必要はないんです。

良かれと思った「文字の練習」が逆効果に( ;∀;)

「じゃあ、早くから練習させちゃダメなの?」と思うかもしれませんが、ここも驚きのデータがありまして…。

なんと、
「家庭で文字読みの学習をすればするほど、成績が下がっていた」
という統計データが出たそうです。

苦手だからこそ家庭学習に取り入れる意識が強かった、というのもあるかもしれませんが、要するに「まだ習得の準備が整っていない年齢の子に、無理やりやらせても逆効果にしかならない」ということが言えそうです。

無理にやらせると「やりたくない」「文字や国語なんて嫌い」というネガティブなイメージが植え付けられて、結果的に成績まで下がってしまう…。
大人も子どもも、ちょうどいい難易度のものをやるのが一番やる気が出ますし、楽しい!と思えるのは想像しやすい話ではないでしょうか。

文字の練習よりも「外遊び」が最強の土台作り

小1の夏には自然と獲得できるデータがあるんだから、幼児期に無理やり文字の練習をしてマイナスイメージをつけるくらいなら、もっと別のポジティブな活動をしたほうがいい。

宇野先生は、外でいっぱい遊んだり、自然と触れ合ったりするなどの経験の重要性もお話されていました。

これ、僕が日々の臨床ですごく実感していることと一致していて、心の中で強く共感していました。

外遊びや自然との触れ合いって、直接「読み書き」とは関係ないように見えるかもしれません。
でも、体のバランス感覚を養ったり、いろんな感覚情報を得たり、その中で自然と語彙(言葉)を増やしたりと、子どもが成長する上でものすごく大切な土台作りになるんですよね。

それはもちろん、読み書き以外のことにも通じていきます。

まのぱぺ相談室として、これからできること

今回の講演を聞いて、僕のようなSTが果たすべき役割は大きく2つあるなと思いました。

ひとつは、根拠のあるデータをもとに、不安になっている親御さんや保育園の先生に「年長さんで読めなくても、まだ焦らなくて大丈夫ですよ」と正しく伝えて安心してもらうこと。

そしてもうひとつは、将来本当に読み書き障害のリスクを抱えているお子さんをしっかりと見極めて、必要な子には専門的なアプローチをしていくことです。

今回学会で得たこの最新知見は、まのぱぺ相談室でのオンラインカウンセリングや、今訪問している保育園での支援にもしっかりと還元していきたいと思います!

今回は読み書きに焦点を当てたお話でしたが、それ以外のことも含め一人で抱え込んでいる方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談くださいね。

一人で抱え込まず、専門家に相談してみませんか?

単発のご相談から、定額プラン、LINEでのミニ相談まで。
ご自身のペースに合わせた具体的な作戦を一緒に考えます。


この記事を書いた人:まの (まのぱぺ相談室代表)

【保有資格】
言語聴覚士 (国家資格) / 公認心理師 (国家資格) / 正規Keep Safeインストラクター修了

【主な経歴・実績 (臨床経験10年以上)】

  • 元・看護専門学校 非常勤講師(リハビリ概論/言語・高次脳機能障害などを担当)
  • 急性期病院での小児~成人リハ (失語症、嚥下、高次脳機能障害)
  • 1歳~18歳までの支援 (発達障害、ことばの遅れ、吃音、緘黙、学習障害など)
  • 重症心身障害児・者リハビリテーション
  • 保育園へ毎月訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
  • 学会での発表実績あり (令和8年も発表に向けて準備中!)

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