こんにちは、まのです。
うちの実父ですが、21才の頃から78才になる今年まで57年続けてきた居酒屋を閉店することとなりました。
そんな、とある住宅街にあった些末な店の終わりをよかったら聞いてやってください。
まのの父親の店でしか味わえないこと
冒頭にも書きましたが、僕の父親はかれこれ57年居酒屋を切り盛りして参りました。
若い頃は店も繁盛しバイトや家族を店員として雇うような、それなりに大きなお店でしたが。
60才前後ぐらいからは父親1人でカウンター席のみの小さな店を経営しておりました。僕もその店の常連になることが夢だったのですが、図らずも大学卒業⇒就職と共に県外配属を命じられ、そこから学校に行き直して言語聴覚士になったり病院に勤めたりとしているうちに早13年ぐらい。
ようやく広島に帰って来た頃には父親は70代半ばになっておりました。
僕の家から若干距離があり、月1回通えたぐらいではありますが何度か同僚や友人を誘ってお店に行けたのは良かったかなと。
僕は1人でその店のカウンターで飲むこともしばしばあったのですが、そこで気づいたことがあります。
父親が経営している店は、現代においてはなかなかに汚めで年寄り1人だし、耳も遠くなってきていたりで決して万人受けするようなお店ではありませんが。
ただ、父親の店というのは本当に唯一無二なんです。
カウンターで飲んでいると、知らないお客さんと気が付いたら話して楽しく過ごせる雰囲気がある。
そういうお店、もちろん各地に無いわけではないんですが…僕は「親父の店のようなところが無いかなあ」とフラッと気まぐれに居酒屋を巡って十数年。
今のところ、あれほどに楽しく人とつながることのできる場所を見つけられたことはありません。
……本当のことを言うと、昨年香川県に旅行に行った際に入ったお店がかなり近い感覚を感じて嬉しかったのですが。話の流れ的に、唯一無二ということにさせてください(笑)
いずれにしても、十数年がかり旅先でようやく一か所見つけた、というぐらいには高難易度の稀な場所であったと思います。
誰かのサードプレイスであり続けたっぽい
突然ですが、サードプレイスという言葉を聞かれたことはあるでしょうか?
自宅でも職場でも学校でもない、心からリラックスできて人との交流や責任からの解放を楽しめる場所。
カンタンに言うとそんな感じです。

ちなみに↑の画像はAIに『サードプレイスを説明するイラスト』と注文したところ出た絵です。絶対違うだろ…いや『地球にもはやサードプレイスは無い』という高度な皮肉でしょうか。AIこわい。
話を戻します。
家から職場の往復、あるいは学校との往復で日々を進めざるを得ない現代において、サードプレイスの重要性というものが説かれています。
自分なりに家の外で気持ちを解放できる場所というのは、超情報化社会で且つ人との物理的距離ばかり近く、心から安らげる場がなかなか無い…という現代において貴重な場なんですよね。
これは自分が社会人になり辛いことも経験し、年齢とともに新しいコミュニティとつながることの難しさを知っていく中で痛感していることでもあります。
学生時代の友人などは今も大事でありとても良いことだと思っていますが、それと同じぐらい心の底から楽しめる人間関係の構築って本当に誰にとっても難易度が高いと思います。
誰もが誰かとつながりを求めながら、でも気軽に声をかければ不審者扱いされるのでは?なんて心配もある現代。
不審者扱いとまではいかなくても、「迷惑じゃないかな?」「きっと1人でいたいだろうな」そんな遠慮を抱えた人同士が大量に街中ですれ違っている。なんと不条理な。
ときどき思いますが人間、理性が多少ふっ飛んだ方が幸せな瞬間ってあるんだと思います。
勢いも大事というか。
いろんな人の心の声がSNSなどで顕在化される中、失敗や損失を恐れるあまり身動きがとれなくなってしまうジレンマ。
これは僕自身もそうであるように、頭でどうこうしようと思ってもそうそう解決できるものではないと思います。
そんなときに頼れるのがお酒の力!飲めない方置き去りの話で申し訳ないですが、余計なことばかり考えて人間関係遠慮しまくってしまう僕のような人間にはお酒はときに大変ありがたい。
リラックスして自然に自分をオープンにできます。職場の飲み会なんかでよくあるのですが、酔って話して気づく、話してみれば意外と楽しい。苦手だと思ってたけど良い人じゃん、的な(次に職場であったときどうかは…五分五分かも!)
しかし、1人でお店で飲むにしてもどこでもかしこでも人に声をかけて良いわけではありませんよね。たとえば鳥貴族での1人飲みは大抵の場合、自分1人で飲みたいという方が多いでしょうし。
うちの父親の店というのは、「誰かと話したい」という人が集まる空気感がある場所でした。
僕はあまり行く勇気がないのですが、バーとかスナックという場所だとそういう「誰かと話したい」人が集まる場になるんでしょうか?
どういう場所が自分にとって居やすいのか、行きやすいのか。
この辺は人によってそれぞれだと思います。
ただ言えるのは、恐らくうちの父親の店は誰かにとって「居心地の良い場所」「人とつながることができる場所」としての役割を果たしていたのだろうということです。
うちの父親の店に関して言えば、こういう場所を作ろうと思って作るというのはとても難しいのだと思います。
なぜそういった人が集まりやすいのか。なぜこの場所だと気軽に人とつながれる気がするのか。
言語化できる部分もあるとは思いますが、言語化できない部分の方が多いと思うんですよね…なんとなくの店の雰囲気であったり、父親のキャラクターであったり。
言語化できないというのは、マネや伝承が難しいということではないかと思います。
だからこそ貴重なんだなと。
57年という半世紀以上の間、その時代その時代に沿ったサードプレイスとして人の役に立ってきた。
それも恐らく、他の誰かではマネできない形で。もしかしたら僕のように「この店じゃないとダメなんだよなあ」という人もいたかもしれません。
そう考えると長く続いた店の閉店が寂しく、やり遂げた父親に関しては誇らしい気もします(美談に書き過ぎなところもあり、これまで本当に紆余曲折ありましたが)。
居酒屋に限らず、僕も今後の人生でサードプレイスという場を見つけられるかどうか。
ちょっとだけ考えては「難しいな…」と唸ってしまう話でもあります。
オンライン相談という場ができること
↑の文章でも散々挙げた通り、サードプレイスであったり何気なく誰かと話せる場、あるいは家族など身近な人には言いづらいことを言える場というのは生きていく原動力としてとても大切です。
僕自身、カウンセリングを行う中でピアカウンセリング(当事者同士の集まり)や近い趣味や嗜好をもったリアルのつながりをもてる場というのものをご相談者さんと一緒に考えることが多々あります。
その方の希望や状況に合わせ、可能なものを考えていきますが正直なところ一朝一夕で見つからないことは珍しくありません。
誰しもそうですが、頭で分かっていても実行には様々な壁がありますし、また地域における資源もそれぞれ異なれば、巡り合わせの運というものもあります。
その中でオンライン相談という場は、サードプレイスが見つかるまでの間の避難所という考え方もできるのかもしれません。
身近に良いつながりがあればそれが最良であり、僕もオススメしていますがすぐに見つからない、というとき…電話1本、あるいはメールで思いの丈を話せる場。これはこれでまた重要な役割があると思っています。
はっ…もしや僕は知らず知らずのうち、父親がやっていたサードプレイスという場の提供を違う形で実現しようとしているのでしょうか。
という言い方をするとエモいと思いましたが、実際全く関係ありません。たまたまです(多分)
なんにしても、まのぱぺ相談室にも誰かの安全基地となれる力があると思っていますので…誰にも話せないことを話せる場として、より多くの方にとっての選択肢の1つとなれると嬉しい限りです。
父親の店最終日はそれっぽいフィナーレを飾りました
さて、父の店の営業最終日ですが実は完全貸し切り状態で設定させて頂きました。
というのも店を閉めるきっかけになったのが父の体調の問題でして。足が悪いんですよね。
これまでも足を引きずりながら1人で店をやってきましたがいよいよ限界が…ということで最終日の数週間前からすでに店は営業していなかったのですが。
僕としても最後に父の店に行きたいという思いもありましたし、父親としてもうやむやに最終日が訪れたというのでは成仏しきれない(未練的な意味で)のではと思いまして。
僕が非常勤で勤めている職場の同僚に声かけしたところ、快く5人の方が来店してくださり。
僕も含めた6名でカウンターを満席にすることができました。父親の店はカウンターのみですので、最終日にして満席という快挙!
来て下さった皆様、改めてですが本当にありがとうございます。
極力店にあったカクテルと日本酒を飲み干せるよう頑張りましたが力及ばず…あれ以上飲むと死人が出そうだったので飲み干し大作戦はあきらめました。
後日聞いたところ、残っていた酒は数日で父1人飲み干したそうです。化け物か。
ちなみに休肝日なしで飲み続けてタバコも吸いまくり夜中3時ごろに寝るという生活ですが、父親の採血データは全項目基準値内です。
僕は総合病院に勤めていた間、採血データをたくさん見てきましたが…この生活でこの数値は常軌を逸しているとしか思えません。血圧は200を超えることがありさすがに治療が始まりましたが…。
僕に少し健康を分けてほしい。医学の叡智が通用しない人類って存在するんですね。
なんだか最後は話が逸れてしまいましたが…ともかく無事、最終日を小ぢんまりの店なりに盛大に行うことができました。
憩いの場が無くなることは惜しいですが、形あるものはいつか無くなる運命…新たなサードプレイスが僕にも皆さまにも見つかりますよう、前進するっきゃないですね。
まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん
この記事を書いた人:まの (まのぱぺ相談室代表)
【保有資格】
言語聴覚士 (国家資格) / 公認心理師 (国家資格) / 正規Keep Safeインストラクター修了
【主な経歴・実績 (臨床経験10年以上)】
- 元・看護専門学校 非常勤講師(リハビリ概論/言語・高次脳機能障害などを担当)
- 急性期病院での小児~成人リハ (失語症、嚥下、高次脳機能障害)
- 1歳~18歳までの支援 (発達障害、ことばの遅れ、吃音、緘黙、学習障害など)
- 重症心身障害児・者リハビリテーション
- 保育園へ毎月訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
- 学会での発表実績あり (令和8年も発表に向けて準備中!)

