病院も困ってる

ストラテラが販売中止?ADHD治療薬の今後について薬剤師さんに聞いた話

こんにちは、まのです。

ADHDの薬といえばコンサータ、ストラテラが以前から使われてきました。
そこに近年ではインチュニブ、ビバンセと新しい選択肢が加わりより個人の体質や必要性に合わせた薬の選択が可能となってきています。

そんな中、昨年末ごろからにわかに話題になったのがタイトルの件。

これまでADHD治療薬の第一選択として使われることの多かったストラテラ(薬品名:アトモキセチン)が、製造中止となり『このままではストラテラが必要な患者さんの手元に届かなくなるのでは…?』
という不安が一部でささやかれる事態に陥ったというわけです。

今回のコラムでは先日僕が知人の薬剤師さんとお話しする機会があり、そのときにお聞きした今後の予想される流れなどをお伝えしたいと思います。
くれぐれも留意して頂きたいのですが、あくまで僕の知人の薬剤師さん一個人の予想です。経験則として恐らくこうなるかな、というお話しですので明確な根拠があるわけではありません。

そこは誤解のないよう、1つの参考情報として読んで頂けたらと思います。

なぜストラテラが製造中止になったか

ストラテラの今後について触れる前に、そもそもこういった事態が起きていたことをご存知ない方も多いのではないかと思います。

なぜこれまで当たり前のように使われていたストラテラが製造中止になってしまったのか…それはストラテラに発がんリスクのある物質が混入してしまったためです。

発がん性物質と聞くととんでもない一大事のように感じますが…先述の薬剤師さんいわく、こうしたことはある程度起こりえることなのだそうでして。

というのも、問題があったのはストラテラの成分そのものではないそうです。
ただ製造過程において、一部のロッドでの製造工程の中で化学反応を起こしN-ニトロソアトモキセチンという発がんリスクのある物質が生成されてしまった。
というのが今回のトラブルの原因だとのこと。
(混入が確認されたロッドの在庫は回収済み)

この辺りは正直、化学の知識が無い僕にとっては「そうなんですね」と頷く以外に特に言えることはないのですが(^_^;)

ひとまず経緯をまとめると、

ストラテラに発がん性物質の混入が発覚、製造中止(令和6年11月)⇒
国内のストラテラの在庫が尽きる時期が令和7年7月前後と通達(令和7年3月)⇒
発達障害当事者協会さんが厚生労働省へ陳情(令和7年8月)⇒
厚生労働省より、ジェネリック医薬品の供給が安定して可能となっており過剰な在庫発注などしないよう回答(令和7年8月)

という流れのようです。↓は発達障害当事者協会さんのホームページより。

https://jdda.or.jp/%e3%80%90%e7%b6%9a%e5%a0%b1%e3%80%91%e3%82%a2%e3%83%88%e3%83%a2%e3%82%ad%e3%82%bb%e3%83%81%e3%83%b3%e8%a3%bd%e5%89%a4%e3%81%ae%e5%ae%89%e5%ae%9a%e4%be%9b%e7%b5%a6%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6

当事者の方や医療現場への影響は?

このような経過をたどっているストラテラ(アトモキセチン)の顛末ですが、実際のところADHD当事者の方や医療現場への影響はどうだったのでしょうか。

僕が直接関わった方の中でお聞きしたのは、この夏に初めてADHDと診断を受け内服が始まるという際に「ストラテラは残りの在庫が少ないため処方を始められない」と医師から説明を受けたというお話しでした。

なるほど、たしかに優先順位としてはどうしても現在服薬されている方の継続が優先となるでしょうから…新しく飲み始めたい、という方は特に制限を喰らってしまう場合が多かったのかもしれません。

さすがに僕の周りでは、飲んでいるストラテラを中止にされたといった話は聞きませんでした。
ただ、ネットで検索するとやはり今後への不安というものはかなり聞かれています。

ジェネリックが十分量供給されているという説明ではありますが、そのジェネリックが行き届いていないという声やジェネリックの作用への不安の声も多い状況のようです。

流通に関しては地域差や各機関での在庫状況などでタイムラグがあると思われ、現況を注意深く見守っていく他ないのかもしれません。

ストラテラの力を借りることで日常生活や仕事場面で力を発揮できている、という方も多くおられる薬です。どうにか一日でも早く、必要な方が安心して処方を受けられる状況になってほしいと願うばかりです。

ストラテラの再販はもう無いの?

さて最後に、僕が知人の薬剤師さんから聞いた話ですが…あくまで経験則での予想としてですが。

こういった混入など何かしらのトラブルで生産が中止された場合、製造過程を見直した上で販売再開に至るという流れはありえるのだそうです。

ただ、見直しの上に再度国に申請をして受理されるなど過程を踏む必要はかなりあるそうで…それが一年先か二年先かは予想が難しい、とのことでした。

ジェネリックのアトモキセチン製剤が代替として機能していければひとまず安心ですが、ストラテラでないと合わない、不安である、という方の声が増すことも今後ありえるわけで…可能であればストラテラの再販もできるだけ早期に実現されると良いのかなと感じました。

それにしても今回、この記事を書くにあたりストラテラについての声などを調べ直したのですが…非常に数多くの方の人生を支えていると言っても過言ではない薬なのだと改めて実感しました。

薬と聞くと、それに対する恐怖心や不安、抵抗感といったものがあって当然のことだと思います。ですが一方で、適切に使うことでこれだけ多くの方の助けとなることができているのですから…これは今もなお、病院受診や服薬の開始に関して悩まれている方にとっても参考になる声ではないかなと思いました。

もちろん薬に頼らずに自立していきたい、あるいは副作用などで薬を飲みたくても飲めないという方もおられます。
それぞれのニーズに合わせ、その方らしい生き方を選択していけることが大切なのは言うまでもありません。

ただ僕らのような支援者側の立場としては、リスクも効果も過大評価することなく適切に理解し、その方に合わせた情報提供ができるということが大切なのではないかな、と改めて考える機会にもなった件でした。

最後に改めて、一日でも早く必要な方のもとへストラテラまたは大体医薬品が届くことを願っております。

まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん

まの profile (当相談室のカウンセラー) 

資格:言語聴覚士
   公認心理師
   正規keep safeインストラクター修了

◎経験領域 (病院勤務時代)
・急性期小児~成人リハ (失語症、嚥下障害、高次脳機能障害)
・1歳~18歳までの支援  (発達障害、ことばの遅れ、(構音)発音、吃音、緘黙、学習障害、嚥下障害)
・重症心身障害児・者リハビリテーション
・保育園へ月1回訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
・学会での発表経験複数回あり

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