英語を習う?

非行から立ち直れた人と戻れない人の違いとは?「家族と居場所」の重要性

こんにちは、まのです。

また最近何かと慌ただしく、コラムや動画の更新が滞りがちに…。

前回の12月の予定お知らせの記事でも少し触れましたが、実はここ数週間、12月末締切の言語聴覚学会の抄録(発表要旨)作成に追われておりまして……。

日々の業務の合間を縫って、パソコンと睨めっこする日々が続いていました。
なんとかほぼ完成し、ようやく少し肩の荷が下りたところです。1月にはひと段落して更新アップできるでしょうか…いやできるはず!なせばなる。

そんな何度目だかの決意表明はさておき今回の記事は、タイトルにもありますようになかなかに重いテーマです。

非行の経験を自ら話す若者たちの講演会

先日、かつていわゆる「非行」と呼ばれる道を通ってきた若い方々の講演をお聞きする機会がありまして。

正直に告白しますと、お会いする前は僕の中で勝手なイメージを作り上げてしまっていました。 「少し怖い雰囲気なのかな」「話し方も荒いのかな」「オラついた感じだったらどうしよう」と……。普段、フラットな視点を持つことを大切にしているつもりでも、お恥ずかしながら自分の中にある無意識の偏見(バイアス)に気づかされます。
知識や思いとして偏見はノーという感覚があっても、根っこから取り払うというのは人間難しいものだな…と改めて実感もしました。

実際にお会いした彼らは、僕の想像をあっさり覆す驚くほど「普通」の若者たちでした。
今は一般企業でしっかりと働かれていて、挨拶も物腰も丁寧。真摯に話すその姿勢からは、過去に壮絶な経験があるとは、言われなければ全く想像できないほどです。

そんな彼らと話していて、まず印象に残ったのが言語化能力の高さです。
自分たちに過去何が起きて、何がきっかけで道を踏み外してしまったのか。そして、どうやってそこから戻ってきたのか。 当時の自分の心の動きを含めて、非常に論理的に、かつ冷静に言葉にできるのです。
「ただなんとなく」ではなく、そこには明確な理由とプロセスがあったことを痛感しました。また、更生に至る取り組みの中で、きっと何度も自身や誰かとともに繰り返し反芻したのだろうということが伺えます。

非行に走ったきっかけ

彼、彼女たちはとても生々しくご自身のエピソードを話して下さり…それを細かくお伝えするのはこの場では控えたいと思います。
プライバシーのこともありますし、また、お聞きしているだけでも苦しくなるような内容も多かったですので。

ただその中で、ある方が語ってくれ学生時代のエピソードについては、1人の支援者としてとても考えさせられるものだったので簡単に触れさせて頂きます。

当時、この方は勇気を出して、学校の先生に助けを求めたそうです。
真剣な悩み相談でした。しかし、その先生が返した対応は「いじり」や「からかい」でした。
先生からすれば、場の空気を和ませようとしたのかもしれません。
ですが、必死の思いで手を伸ばしたこの方にとって、それは決定的な「拒絶」であり、大人への信頼を完全に失う瞬間でした。

「あぁ、この人たちに相談しても無駄なんだ」

そうやって相談する場を失った結果、彼らは非行という別の居場所に救いを求めることになりました。

もしかしたら返した側は「そんなつもりじゃ」と思うような、何気ない対応だったのかもしれません。ですが心の専門家である我々カウンセラーや、青少年と対峙する支援者、教員という立場にあっては相手がどれだけ真剣に救いを求めているか。
どれだけ勇気が必要だったか、それが裏切られたときの失望感がどれほど大きいか…くれぐれも胸に留めておかなければいけない貴重なお話しだと思いました。

更生へのきっかけと、経験を活かした支援活動

また、ある方が語ってくれた少年院や刑務所に入っていた当時のエピソードがこれもまた強烈でした。

彼らが少年院や刑務所にいた頃、そこで出会った一部の「先輩受刑者」たちの姿についてです。

本来であれば、そこは更生に向けて自分と向き合い、罪を償うための場所のはず。
しかし、先輩たちの中には、自分の犯した罪の深さや、刑期の長さを、まるで「勲章」のように誇らしげに語る人たちがいたそうです。

「俺はこれだけのことをやったんだ」「これだけ長いこと入ってるんだぞ」と。

社会から見れば決して褒められたことではないはずの「罪」を、その閉鎖的なコミュニティの中ではステータスとして誇示する。
これは心理学的に見れば、歪んだ形での自己顕示欲や、自分を保つための防衛反応とも言えるかもしれません。他に誇れるものがないからこそ、罪の大きさで自分の価値を証明しようとしてしまう悲しい心理なのかもしれませんね。

それを目の当たりにした時、今回お話ししてくれた彼らは直感的に思ったのだそうです。
「このままではいけない」 「自分はこうなりたくない」と。

先輩たちの姿が、かっこいいものではなく、どこか寂しく、違和感のあるものに見えたのかもしれません。
同じ境遇に逢ったからこそ感じとれる違和感、そして強烈な危機感。
彼らはその経験を「反面教師」としてバネにし、更生への道を歩み始めたそうです。

さらに驚くべきことに現在は、そうしたご自身たちの経験を活かして、刑務所や少年院で講演活動をされていると言います。そのたくましさと行動力、そして過去を隠さずに次世代のために語る勇気には、ただただ頭が下がる思いでした。

道を分けたのはなんなのか

決して容易ではなかったはずの更生への道に頭が下がる思いの一方で、深く考えさせられることがあります。

彼らは今の生活を取り戻すことができましたが、彼らの周りには、同じような境遇の中で悪い方へ進むしかなかった仲間もたくさんいたそうです。
罪を誇っていた先輩たちのように「戻ってこれなかった彼ら」と「戻ってこれた彼ら」。

その分かれ道は一体どこにあったのでしょうか。
本人の資質なのか、たまたま出会った大人の違いなのか、あるいは本当に些細なタイミングのズレだったのか。

お話を伺う中で感じた共通点として見逃せなかったのは、「家族」や「支えてくれる誰か」の存在でした。

必ずしも両親とは限りません。ある方はおばあちゃんであったり、親戚であったり。支援団体の誰かであったり。
人生の極限状態、大ピンチの時に「あいつなら大丈夫だ」「帰っておいで」と無条件に受け入れてくれる場所があったかどうかが、最後の最後のストッパーになっていたように思えてなりません。

もちろん、家族がいれば全て解決するほど単純な話ではありませんし、それぞれの個別の状況は異なります。
ですが、やはり「自分が帰ってもいい場所」「自分を気にかけてくれる人」がこの世に一人でもいるという事実は、人が更生する上で何にも代えがたい支えになるのだと感じました。

逆に言えば、そうした「居場所」が家庭にも地域にも見つからない時、どうなってしまうのか。

誰からも必要とされていない、自分なんてどうでもいいという感覚や孤独感。
その孤独を埋めるために、暴走族や不良グループ、あるいは犯罪組織といった、別の「依存的な居場所」に救いを求めてしまう。
そこにしか自分の席がないから、悪いことだと分かっていても染まっていく。

彼らの話からも、その切実な「居場所の欠如」が痛いほど伝わってきました。
彼らが非行に走った背景には、単なる若気の至りだけではない、もっと根深い「そうするしか生きていけなかった」という何かがあったように思います。

だからこそ。
家族がその役割を担えれば一番ですが、様々な事情でそれが難しい場合もありえます。
そんな時、地域の中や、公共の場、サードプレイス(第3の居場所)と呼ばれる場所が、どれだけ彼らの受け皿になれるか。

「ここなら話を聞いてもらえる」「ここなら否定されない」 そう思える場所が一つでもあれば、もしかしたら踏みとどまれる一線があるのかもしれません。

専門家として刺激をもらいました

そして、手前味噌にはなりますが、僕たちのような専門機関もその一つでありたいと強く思いました。
物理的な居場所でなくても、オンラインでの繋がりであっても「あなたの話を真剣に聞く大人がここにいる」というメッセージは、誰かの孤独を和らげる一助になるはずだと信じています。

これさえやっておけば誰でも大丈夫!という魔法のような技法や関わりは存在しない、と僕は思っています。
ですが、悩ましい課題だからこそ、その子、その人に合った支援や居場所を一緒に考えていきたい。
彼らの話を聞いて、自分にもまだまだできることがあるはずだと、背中を押してもらえたような気がしました。

もし今、周りに相談できる人がいない、話しても茶化されてしまう、どこにも居場所がないと感じている方がいらっしゃれば……。
僭越ながら、当まのぱぺ相談室でも電話相談、メール相談を承っております。

ここは「真剣な話」を茶化したり、頭ごなしに否定したりすることは決してありません。 支援の選択肢の1つとして入れて頂いてはいかがでしょうか…?とチラッと営業風も吹かせながら、本日のお話しを終わりとします。

改めてですが、日夜僕自身もアップデートしつつ、目の前の大人の方、お子さんともどもに沿った支援をできるよう想像力を働かせていきたいと思います。

まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん

まの profile (当相談室のカウンセラー) 

資格:言語聴覚士
   公認心理師
   正規keep safeインストラクター修了

◎経験領域 (病院勤務時代)
・急性期小児~成人リハ (失語症、嚥下障害、高次脳機能障害)
・1歳~18歳までの支援  (発達障害、ことばの遅れ、(構音)発音、吃音、緘黙、学習障害、嚥下障害)
・重症心身障害児・者リハビリテーション
・保育園へ月1回訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
・学会での発表経験複数回あり

上部へスクロール