発達検査や知能検査なんて欠陥だらけ(前編)

こんにちは、まのです。
いきなり医療従事者としてあるまじきタイトルで恐縮です。

一応言っておきますと、発達検査や知能検査は大事な情報が数多くあります。僕自身、検査結果を軽視したり『検査なんて意味ねえよ』とアンチに走りたいわけではありません。

むしろ、検査を取る医療従事者側は、検査を受けた方が感じた精神的・費用的・体力的負担を十分考慮し、検査結果を前向きに活用できるよう全力を尽くすべきです。

点数の結果だけでなく検査中の様子、難しい課題があれば難しかった要因、力を発揮できた場面での要因。その日のコンディション、その方やお子さんの嗜好や精神状態、性格、仕草、周囲の環境、検査者の状態などあらゆる条件を考慮してその方の理解に用いることが大切です。

では、欠陥だらけなんていうタイトルにしたのはなぜかという話ですが。

実際に検査を受けられたお子さんや成人の方、そのご家族の方、あるいは受けようか迷っている方などとお話ししていると、発達検査や知能検査の得点に注目しすぎではないかなと思うことが多々あるためです。

↓後編記事はこちらから

検査結果に注目しすぎてしまうのは当然ではある

ただ、これは当然とも言える受け止め方だと思います。
仮に病院を受診して採血をしたとしましょう。あなたの炎症値は基準値を大きく超えているため、入院が必要です。
と言われて疑う方はいないでしょう。仮に自覚症状がなくとも「それは大変だ…入院して治療に専念しなくては」と多くの方が考えられるのではないでしょうか。少なくとも、「そんなはずはない。ただの風邪なので家に帰ります」と答える患者さんより健全な受け止め方ではないでしょうか。

発達検査や知能検査も、(多くの場合)病院からデータを数字化され渡されるという点で採血と似ています。
そもそも『検査』という大層な名前がついていますしね。

そこで「あなたのIQは〇〇です」とか「あなたのワーキングメモリーは〇〇で、見て推測する能力より弱さがありますね」などと言われれば、それはそれは一大事でしょう。

発達検査や知能検査の結果次第で、自身の障害名や病名が変わってくると思っている方もおられます。それはそうですよね、検査って名前がついていますから。

ですが実際には、これらの検査の結果1つで診断がつくケースは少ないです。様々なシチュエーションが考えられるのでゼロとは言いませんが…。
例として神経発達症(発達障害)で言えば、IQがいくつだからとか処理速度がいくつだからといった理由だけで診断名はつきません。

検査結果だけでなく実生活でどのような困難が生じているか、どのような偏りや不適応といった難しさがあるかといったことを総合して判断され、あるいは別の検査(ADHDに特化したものなど)も組み合わせるなどし、診断がつくというのが通常の流れです。

これは言い換えれば、発達検査や知能検査だけでは分からないことが数多くある、ということでもであります。
IQ80と同じ結果であっても、生き方は千差万別であり実生活で苦労している方もおられれば、自身が満足のいく生き方をされている方もおられます。
これはIQ100でも140でも180でも同じことです。

加えて、IQが〇〇という結果だったと言ってもその数値の解釈はよく気を付けなければいけないことがたくさんあります。
そうした背景を含めて、検査結果の得点で一喜一憂し振り回され苦心されている方々にお伝えしたいという思いが「発達検査や知能検査なんて欠陥だらけ」というやや過激なタイトルにつながったというわけです。

ここまで書いておいてなんですが…欠陥という言葉はあまり好きではありません(どないやねん)。
あらゆる方法にはメリットもデメリットもありますので。
発達検査や知能検査が一概に悪者というわけではありません。というか、むしろ個人の特性を客観的に把握する方法として重要です。

というわけで、ここからは欠陥ではなく「ツッコミどころ」という言葉を使わせてください。
実際、それぞれの発達検査や知能検査はツッコミどころが多々ありますので…以下より、その中身について説明していきたいと思います。

発達検査や知能検査のツッコミどころ① そもそもブレるもの

まずツッコミどころ1つ目です。これは上で挙げた、採血などの生物学的な検査とは大きく違う点です。
以前、当相談室のコラムでも触れたことがあるのでそのページへのリンクを貼っておきますね。
もう少し詳しく知りたい、という方は↓もご参照ください。
そんな時間ない!という方のために、簡単に要約したものをこの記事では書かせて頂きます。

さて、ここではごく簡単に触れておきますと…知能というものは、採血のような物理的に計測できるものではありませんので。
IQというものはあくまで推測値でしかないんですね。

たとえば今回検査をしてIQ120です、という結果が出たとして。
それは正確には「あなたのIQは120です」という意味ではありません。

本当の意味するところは「あなたのIQは112~127ぐらいの範囲の中にある確率が90%です」というイメージです。
この、90%の確率で入るとした範囲を『90%信頼区間』と言います。

今回はたまたま90%としましたが、95%信頼区間というものもあります。この場合は予想が外れる可能性を5%まで下げないといけませんので…より予想範囲を広くする必要があります。
ということで、「あなたのIQは108~131ぐらいの範囲の中にある確率が95%です」という予想の仕方になります。

これほどまでにブレがあるのが、人の知能を測るということの難しさを表していると思います。
その日の体調はどうか、集中しやすい環境だったか、緊張しない雰囲気を出題者が作ることができていたか、たまたま最近似た課題を行ったことがあったか、本人は検査に前向きに取り組んでいたか……挙げればキリがないほどブレの原因となる要因が考えられます。

さらに後でも触れますがこれら以外の要因もあって、知能検査というものは採血などと比べると正確性という意味ではかなりツッコミどころがあります。

なにせ95%の信頼区間としてかなり大きな幅を設定した上でも、それでも5%の確率で外れてしまうのですから。
確かに得手・不得手の傾向をつかむためにも検査結果は大切ですが、鵜吞みにしていいものでもない、という両軸の考え方をもって頂けると幸いです。

発達検査や知能検査のツッコミどころ2 思考過程は1人1人違う

続いてのツッコミどころはこちら。
人の思考過程は1人1人違う、というタイトルにしました。
こう名付けたものの、どこから言葉にしていけばいいか悩むほどに人の思考過程は複雑です。

せっかく採血という例を出してきていますので、ここでもそれを使うことにします。
上でも例で出しましたが、「あなたの炎症値は大変な高値なので入院が必要です」
という言い方をお医者さんからされたとして、その説明はウソではありません。

ですが実際には、治療の際に重要なのは「なぜ炎症値が上がっているか」でしょう。
炎症が上がるには実に様々な原因が考えられます。
感染、アレルギー、骨折や出血などの外傷、悪性腫瘍などなど…

当然ですが、炎症値が上がっているという現象だけを見て、背景を考えずに炎症を下げることだけに努めると患者さんの病気は治りません。
そうならないよう、お医者さん方は患者さんに様々な検査をします。追加の採血をしたり、レントゲンを撮ったり心電図、尿検査、視診、触診、あらゆる方法で可能性を絞り込み、患者さんの体に何が起きているのかを突き止めて治療します。

この流れを、発達検査や知能検査に当てはめて考えてみると。
IQが〇〇だった、あるいは凸凹が大きかった、ということだけで診断がつくということはやはり考えにくいです。
あくまで検査結果はデータの1つであり、仮に凸凹が大きかったとして、「ではその方はどのようにして考え、何が苦手で実生活での困難の原因はなんなのか」あるいは「その方が力を発揮しやすい状況を作るにはどうしたらいいか」というところに結びつけて考えていくのが肝心なところです。

ですので内科であればレントゲンや心電図など必要な検査を取ったように、より掘り下げた解釈というものをしていきたいわけですが。
ところがここでも、人の思考を数値化するということの難しさが絡んできます。

心臓が二個ある人は基本的にはいません。また、動脈と静脈が逆になっている人もいないでしょう。
人の物理的構造は、障害されている部位がある可能性はあれど原則は同じです。
心臓の動きを見たいとなれば心電図を用いるというのは分かりやすいですし、心電図に異変があればそれは治療対象あるいは経過観察の対象と見て間違いはないでしょう。
(一応言っておきますが、内科の診察が簡単という話ではもちろんありません)

ですが一方で、思考過程というものは1人1人が違います。
視覚よりも聴覚を活かした方がイメージがしやすい人。
数字と色が一緒に頭に思い浮かぶ人。
人が目の前にいるだけで気になって集中がしづらい人。
指で空書きをすると漢字が思い浮かびやすい人。
1問間違えるとリズムが崩れてしまう人。
1つ前の問題が気になって後の問題にまで影響してしまう人。

挙げていけばキリがありません。

これほどまでに多様な要因が絡む中で、その方の特性の全体像を捉えるためにはより繊細な評価が必要となります。
そのために必要に応じて追加の検査をしたり、カウンセリングや診察の中で自己理解を深めたりといった経過が大切となります。

これは
「心電図のここに異常波形がある」
「レントゲンのここに影がある」
といったことよりも言語化がしづらいことです。
特性と向き合う上で言語化していくことは大切ですが、時間がかかります。
だからこそ、言語聴覚士や作業療法士、公認心理師や臨床心理士といった専門スタッフが一緒になって考えていくことが大切でもあります。

ですが残念なことに、言語化が難しいからこそ独自の解釈というものもまかり通りやすくなってしまうということが言えます。
「ワーキングメモリーが低いと生きづらい」「凸凹が大きいと社会生活で苦労する」などなど、あまりに安易な決めつけや思い込みがSNSなどを通じて、定説かのように広がってしまうんですよね。
人は苦しいときほど、すぐに答えをくれる存在をありがたがる性質があります。
ましてや様々な情報がお手軽に入手できる時代ですので…インスタント麺みたいな早く分かりやすい結論は、美味しい魅力に満ちているわけです。

ですが、この決めつけはあまりにもったいないことだと思います。
レッテルを貼って自分や家族の可能性を狭めていないか。人を見るときに偏見のもとになっていないか。

十分注意しておきたい点だと考えます。

後編では

すみません、一本の記事にしたかったのですが思いのほかボリューミーになってしまったのでここで一旦区切りたいと思います。

後編では
ツッコミどころ③ 解釈の落とし穴
ツッコミどころ④ そもそも凸凹があって当然
まとめ 検査結果を前向きに活用するために

という構成で作成したいと思います。

できるだけ簡単に書きたいと思いつつなんですが、前後編になってしまいました。
やはり知能や思考というものを言葉で説明するのは難しい、と思いつつ…でも言葉数が多くなってしまうのは僕の癖の問題かもしれない…とも思ったり。

なにはともあれ、後編は近日アップしますので少々お待ち頂けますと幸いです。

まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん

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この記事を書いた人:まの (まのぱぺ相談室代表)

【保有資格】
言語聴覚士 (国家資格) / 公認心理師 (国家資格) / 正規Keep Safeインストラクター修了

【主な経歴・実績 (臨床経験10年以上)】

  • 元・看護専門学校 非常勤講師(リハビリ概論/言語・高次脳機能障害などを担当)
  • 急性期病院での小児~成人リハ (失語症、嚥下、高次脳機能障害)
  • 1歳~18歳までの支援 (発達障害、ことばの遅れ、吃音、緘黙、学習障害など)
  • 重症心身障害児・者リハビリテーション
  • 保育園へ毎月訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
  • 学会での発表実績あり (令和8年も発表に向けて準備中!)

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