こんにちは、まのです。
今回は以前2本に分けて書いていたゲーム障害のお話を整理し、1本にまとめたものしてみました。
令和6年9月に出席した研修会で学んだ内容を整理したものとなっています。
「ゲーム障害(ゲーム行動症)」の定義から、「なぜ発達障害の子はハマりやすいのか?」という深掘りまで、今回は前後編に分けずに一気にお届けします!
ゲーム障害(ゲーム行動症)って?
さてそれではまずは簡単にではありますが、ゲーム障害というものの概要から考えていきたいと思います。まずそもそもゲーム障害とはなんなのか?というお話しから。
言葉の印象からなんとなく、ゲームに依存して現実世界の生活に支障が出ているような状態…というイメージは湧きやすいかと思います。ただ実際のところ、まだまだ定義や見方には議論されている最中のものも多々あります。
ここではICD(国際疾病分類)が2022年に定めた定義を掲載します。 ICDではゲーム行動症という名前で定義されています。丸ごと掲載は長くなってしまうので要約すると……
- ゲームに対する制御困難(たとえば頻度、強度、時間、終了、状況など)
- 他の日常生活の活動や興味よりもゲームの優先度が高い
- ゲームを続けることで否定的な結果が生じていても、ゲームを続けるまたはエスカレートさせる。
これらのような状態が生活に著しい支障をもたらし、少なくとも12カ月以上継続されているとゲーム行動症に当てはまる、とされています。
ちなみに日本人のうちゲーム行動症に当てはまるのは、男性7.6%、女性2.5%、男女合わせると5.1%と推測されているそうです。
ゲーム障害(行動症)は自然治癒しやすい
当相談室は、発達障害(神経発達症)や愛着障害に関してのご相談を専門的な視点からお受けする場となっていますが……ではゲーム障害の話が無関係かというと、全くそうではありません。むしろ関わり合う可能性が多々あると言いますか。
実はこの研修会でも話題として上がっていたのですが、ゲーム障害が他の依存症と異なる特徴的なこととして、自然に治る場合が少なくないというのです。
「治る」という言葉にやや違和感もあったりしますが、要は特に支援や治療がなくとも生活に支障が無い状態まで戻ってくることができる場合が多いということです。これは他の代表的な依存症である、ギャンブル依存や薬物依存などとは大きな違いです。
なんと、紹介されていた研究の例ではゲーム障害とされた方の中で二年後も問題が続いていたのは26.5%、5年後も続いていた方は0%だったというのです。
発達障害(神経発達症)とゲーム行動症の関係
このように自然軽快も多いゲーム行動症ですが、例外もあります。それは発達障害がある上でゲーム行動症の状態に陥っている場合です。
この場合、一転して自然軽快の期待値は下がり、その方に合わせた支援が必要になることは少なくありません。
なぜ発達障害特性があると話が変わるのか
- ADHD傾向による衝動性や体内時計の調節の難しさ
- ASD傾向による行動のルーティン化、変化への抵抗感、深く狭い興味の対象、想像の苦手さ
といった特徴が、依存状態に陥ったときにマイナスへ働いてしまうわけですね。ですので、ゲーム行動症+発達障害という取り合わせは多々起こりえることであり、支援する側は両方に対しての知識があることが望ましいんですね。
問題はゲームをしすぎることなのか?
さて、ここからはさらに一歩踏み込んで、「そもそも論」を考えてみたいと思います。
この研修会でとても考えさせられたのが、「ゲームをしすぎることの何が問題なのか?」というテーマです。
親御さん方としてはお子さんが毎日ゲームに夢中になっていると心配になっても不思議ではありません。勉強はできているのか……他に趣味でもあった方がいいのではないのか…友達付き合いはできているの?と様々な不安がよぎります。
確かにこれらの不安は至極当然なものなわけですが……一方で前述したように、ゲーム行動症というのは自然軽快率が高いものでもあります。ギャンブルや薬物と違い、ゲーム自体に強烈な依存性があるわけではないのです。
ではなぜゲームに夢中になり、一時的かもしれないとはいえゲーム行動症と呼ばれる状態に陥る方たちがいるのでしょうか。
少し視点を変え、こういう考え方も必要ではないでしょうか。
ゲーム行動症と呼ばれるほど、ゲームに捉われる子たちは現実社会で課題を抱えているのかもしれない。
学習面、友人関係、いじめ、家族との不和、その他あらゆるストレス……こうしたフラストレーションを抱えた子たちが、家の中の限られた場所で手に入れられる安全基地。それがゲームになっているのかもしれません。そう考えるとけっこう切ない話です。
いわばゲーム行動症の方にとってゲームは、現実社会での満たされない心の受け皿となっているかもしれないのです。
遊びと依存の境界線
この勉強会に出席されていた小児科医から出た意見が印象的だったのですが、「ゲームを楽しんだ上で、現実にも戻って来れるのであればそれは遊びの範囲」というものがありました。
遊びは、活力を高めたり不安を軽減するといった大切な役割があります。
ましてや現代社会では、子どもたちが気軽に集まったり運動したりといった遊びができる環境がどんどん減っています。
そうした場が無い中で、ゲームの負の側面ばかりに注目するのは子どもたちにとってさらなる負担という考え方もできます。外に出る場所もなく、ゲームもできず、ダメダメ尽くしでは子どもたちはどうすればいいの?という状態です。
お子さんがゲームをしている時間が長いと感じた場合、周囲の大人は少し冷静な目が必要かもしれません。
ゲームをしながらもある程度自制できているのであれば良し、という見方も1つでしょうし……。
逸脱したゲームへの執着を見せているのであれば、ゲームという現象そのものだけでなく、その子全体を見て対応を考えた方が親子双方にとって良い方向へと進めるかもしれません。
他の依存症とゲーム行動症の違い
おまけ的に、他の依存症とゲーム行動症の違いにも触れておきます。
なぜゲーム行動症は他の依存症と比べて自然軽快率が高いのか……?
これは1つには、ゲームがもたらす快感の特性が関係している可能性があります。
ゲーム行動症の方にとってゲームというのは、スリル・臨場感・迫力といったポジティブな快感によって生じるものより、現実で受けた傷を癒す場であるという面の方が大きいというのです。
もちろんゲームにもスリルや臨場感などはあるわけですが、ギャンブルやドラッグのように強烈なドーパミンが出るものでも無いわけです。
それよりも、たとえばオンラインゲームの中で頼られる優越感であったり、自分の居場所があるという感覚であったり…現実で受けたマイナスをゼロに戻す癒し、という意味合いが大きいという考えですね(これはこれで、根治的ではないものの大切な役目をもった活動とも言えます)。
この観点からいくと、中高生ぐらいの子が5年後もゲーム行動症の状態が続いていた例がゼロだったというのは少し納得がいくかもしれません。
この年代にとっての5年は大きいですからね…当人にとっては永遠に続くと思っていたようなストレスも、ガラッと状況が変わっているということも珍しくないでしょう。
ゲーム依存の「3原則」と加齢のブレーキ
また、人間が依存を起こしやすいものには3原則があるそうです。それは
- 楽しい
- 疲れない
- 飽きない
というもの。ちなみにひと昔前のゲームは数週間もすれば飽きるものが多かったわけですが、現代のゲームはオンライン化や継続的なアップデートで飽きにくくなっています。この辺はゲーム行動症の方が増えるリスクとして、今後挙げられるものなのかもしれません。
さて、この3原則はゲームという娯楽にも当てはまるわけですが……「最近のゲームは疲れてできない」といった大人の方の言葉を耳にすることはありませんか?
実際、僕自身もかなりのゲーマーですが30代後半になってできるゲームのジャンルは限られてきました。
若いときは疲れ知らずで無限にできる気がしていたゲームも、年齢とともに疲れの対象となってくるわけです。この辺りも、ゲーム行動症が長期間持続しにくい要因の一つではないかという意見がありました。なるほど……いろいろな角度から考えてみることでの発見ってやはり大切ですね。
それにしてもときどき思いますが。
加齢による衰えって疎ましいものですが、ときに生きていくために必要なこともあるんですよね。話が逸れますが、生物ってよくできているな…と思ったりもします。
まとめ
今回の記事は2本分を再編集したということもありボリュームたっぷりな内容で、読まれる方も大変だったのではないかと思います。 最後まで読んで下さりありがとうございます。
今回記事にし直したことで改めて振り返ることができましたがこの勉強会、本当に学ぶことが多く……実際はまだまだここに書ききれないほど様々な視点から得られたものがありました。
引き続き勉強していきたいと思うとともに、もしこれを読まれた方がゲーム行動症というものに対して興味をもって頂ける機会になっていたらとても嬉しいです。
とんでもなく余談ですが、記事トップの画像はR6年11月にこの記事の原本となったものを公開した際、AIに「ゲーム依存の子」とリクエストしてできた画像です。
AIの「子ども」の認識はどうなってんねん、と前回はつっこんだものです。
今回、R8年1月最新版のAIに新たに画像を作ってもらって見比べてみようと思ったのですが…なんと「今はエラーで画像が作れない」という結論。
退化してる!?
まさかのオチも加えつつ、ゲーム行動症についてのリニューアル記事を締めくくりたいと思います。
この記事を書いた人:まの (まのぱぺ相談室代表)
【保有資格】
言語聴覚士 (国家資格) / 公認心理師 (国家資格) / 正規Keep Safeインストラクター修了
【主な経歴・実績 (臨床経験10年以上)】
- 元・看護専門学校 非常勤講師(リハビリ概論/言語・高次脳機能障害などを担当)
- 急性期病院での小児~成人リハ (失語症、嚥下、高次脳機能障害)
- 1歳~18歳までの支援 (発達障害、ことばの遅れ、吃音、緘黙、学習障害など)
- 重症心身障害児・者リハビリテーション
- 保育園へ毎月訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
- 学会での発表実績あり (令和8年も発表に向けて準備中!)

