こんにちは、まのです。
今回は陰謀論というテーマでお話ししていきたいと思います。
陰謀論というと、軽い話題のネタになるような地球平面説などの都市伝説的なものから、ちょっと不安を感じてしまうSNSなどで多少のリアリティをもって広まる政治的見解など実に多岐に渡ります。
いずれにしても、それらを信じていない人から見ると「なぜそれを信じるのか?」不思議でならない、ということも多くあると思います。
今回はこの違いの背景で起きている心理について書いてみました。
なぜ陰謀論の話とカウンセリングが関係するか
個人的に、この陰謀論というのは以前から興味があるテーマでもありました。
というのも、陰謀論を信じていない(あまり考えたことがない)自分からすると、陰謀論を信じている方となかなか話が合いそうにはありません。
これはどちらが正しいとかではなく、信念の違いだと思うのですが…考えてみれば世の中の悩みの大半は人との信念の違いではないでしょうか。
職場での同僚や上司、部下との信念の違い、家族間での信念の違い、恋愛関係の中での信念の違い…。価値観の違いなど他の言葉を当てはめても良いわけですが、要はそれぞれの人が信じるもの、重要視するものが違うためにときに分かり合えず悩むわけです。
陰謀論というのはこの価値観の違い、というものを考えるにあたって1つの切り口なるではないかと考えました。
なにせ、自分は地球は丸いと信じて生きてきたわけですが、心の底から地球は平面だと信じる方もいる。
ときにそこまで考え方の違いが生まれるというのが人同士というわけで…どうりで日々「この人とは考え方が違うなあ」と思うことが多発するわけです。
というわけで、陰謀論を信じる信じないは個人の自由にしても、そこに行き着く心理にはどのような作用が生じているのか。それを理解することは、人の心の支援をする際にもきっと役に立つだろうと思いました。
自分が踏み入れたことのない領域だからこそ、知識としてまず知るところから始めないと、ですね。
ちなみに今回、参考図書としてこちらの本を読んでこの記事を書いております。
なぜ、あの人は陰謀論を信じるのか?: 迫りくる陰謀論時代への備え方 陰謀論を科学する
アーサー・エバンス (著)
https://amzn.asia/d/cqtotEz
コントロールできないことへの不安
本の中で、陰謀論を信じやすい状況や性格などについて書かれているのですが中でも強く頷けると思ったのがこのコントロールできないことへの不安、という考えです。
人は基本的に、予測できない状況、自分の力でどうにもできない状況を嫌います。
自閉スペクトラム症の特性として、変化への弱さ、常同性へのこだわりといったものが有名ですが、何もこれは自閉スペクトラム症の特性がある方に限ったことではありません。
以前僕のチャンネルでのショート動画でも触れているので、そちらも貼らせて頂きます。
動画内でも触れていますが、人はそもそも変化や未知のものに弱い生き物なわけです。
その傾向が一定を超えて強く出たとき、ときに自閉スペクトラム症の特性と考えられるんですね。
そしてなぜ変化や未知のものに弱いかというと…こうした状況では自分の安全が脅かされていると本能的に感じるからです。
勝手知ったる自宅の慣れた環境下では安全であっても、ひとたび外に出れば安全ではないと心のどこかで感じている(どんなに日本が安全な国であっても)。
自分のペースで仕事や家事をコントロールできればストレスは少ないのに、人から仕事を押し付けられたり急な用事で考えていたスケジュールが変わるとストレスが大きい、という経験は誰にでも覚えがあるはずです。
これらも、人は自分でコントロールしている感覚があればあるほど、物事はうまく運び安心なはず、と思うようにできているんですね。
自分と違う価値観の人を前にしたとき、『どうにかして変えよう』『こうすれば自分の言いたいことも分かってもらえるはず』と考え、説得したり叱咤したりあれやこれやと試行錯誤するのもこうした『相手をコントロールしたい』という欲求から来ていたりもします。
コントロールしたい、という欲求はこのように見ると危険であったり不要な感覚に思われるかもしれませんが…これは人類が生きていく中で必要だから備わっている能力です。
コントロールを放棄してしまったら、与えられたことをただこなすだけの無気力人間ばかりになってしまうかもしれません。
自分を守ることもできず、ただ疲弊し、危険な環境に身をおくだけになってしまうでしょう。それに、『コントロールしたい』という欲求のぶつかり合いの中でより人が成長したり、成熟した意見や解決策が生まれたり、新たな発見があったりします。
ですのでコントロールしたい、という感覚はごく自然なものでもあるのですが。
過ぎたるは猶及ばざるが如し、ということで過度に働くと自分や他人を苦しめてしまうことにつながるんですね。
さて話を陰謀論に戻しますと。
すごく簡単に言ってしまうと、世界的に大きな不安にさらされていたり、あるいは個人の中で大きな不安を抱えていたり、というタイミングで人は陰謀論を信じやすい傾向があります。
たとえば新型コロナウイルスが蔓延し…全世界が大きな不安に包まれましたが、これは人からすると『自分がコントロールできている』という感覚を大きく損なわれている状態です。
未知のウイルスの前に、自分ではどうすることもできない。固唾を飲んで動向を見守るしかない。
という状況であり、強いストレスを伴います。
このコントロールできない、という感覚へのストレスから逃れるために…『自分は自分の考えで選択をした』とすることで、『状況をコントロールしたんだ』という実感を得るんですね。
それが例えば、『コロナウイルスは政府がワクチンを使ってコントロールするために故意にばら撒いたものだ』⇒『自分はそれを知っているからワクチンを打たない』
という選択につながっている可能性があります。
一応言っておきますと、かなりシンプルに書いてしまっているので実際はもっと複雑な心理が働いていることが大半ですし…また、これらの考え方自体を否定する意図はありません。
誰もが知っている話題として例に挙げさせて頂いたこと、ご容赦ください。
ともかく、なんだか分からないままでいる不安や、何もできないで言われるがままにするしかない不安、というものは人間にとって想像以上にストレスなのです。
逆に言えば、分からないものを分からないまま考える、向き合うというのは意外と勇気がいることでもあります。
そして実は、この分からないままでいる不安、コントロールできないことへの苦痛、というのはカウンセリングで整理していくことが大切でもある感覚です。
実際、今の世の中で生きづらさというものを感じている方、適応障害や抑うつ、その他多くの精神疾患や非合理的な行動、社会的な不適応というものは、こうした心理状態から生まれているものが少なくありません。
という、カウンセラーとしての僕の視点もあって、特にこの本の中で印象に残った項目となったのだと思います。
簡単に言うと、めちゃくちゃ共感したんですね(;・∀・)
エコーチェンバーの罠
もう1つご紹介しておきたい概念がエコーチェンバーというものです。
X(旧Twitter)やyoutubeなどあらゆるSNSで当然のように起こっている現象と言えますが…知らず知らずのうちに、自分が見たり関心をもったことに関する動画やコンテンツが送り届けられるようになっていますよね。
コンテンツを提供する側としては、その人の興味があるコンテンツを常に表示することでそのサイトなどに釘付けにする効果があります。
仮にyoutubeのチャンネルに出てくるオススメが、スポーツやアニメ、あるいは爬虫類の生態など自分の興味のないコンテンツばかりだともうyoutubeを見ようと思わなくなりますからね。
さて1度見ると、関連する情報が次々に溢れていきます。
動画だけでなく、Xであれば関連するポストがどんどん登場してきますね。
人は、ものすごく周囲に影響されやすい生き物です。
正確には自分自身の言葉にさえ影響され…「疲れた」と毎日言っていると本当に疲れを感じたりしますし、「今日も頑張ろう」と口にしていると本当に頑張れたりします。
それぐらい、言葉や情報の影響は大きいですから…周囲が特定の思考の情報で溢れてくると、当然自分の脳も影響を受けるんですね。
こうして自分が興味のある情報を調べる→肯定する情報が入ってくる→さらに関連した情報が集まる→自分の考えが固定化されていく
という山びこのように自分の思考が連鎖され強くなっていく循環をエコーチェンバーと言います。
また、有名な確証バイアスというものも作用しやすい状況です。
確証バイアスとは、ときに出現する自分の意向と沿わない情報は見なかったことにして、信じたいものだけに目を向けてしまう現象を言います。
分かりやすいものでは占いやおみくじなどそうかもしれません。
占い1位だと嬉しくなりますが、最下位だったときは忘れることにしたり「ま、テレビの占いなんて意味無いけど」と自分を納得させたりします。
こうした人の陥りやすい錯覚や性質も相まって、陰謀論を信じやすい状況というのもまた生まれていきます。
最初は興味本位で見ていたものが、いつの間にか考えに歪みが生じそこから抜け出せなくなっている、なんていうこともありえたりします。
今回は陰謀論というある意味極端な例ではありますが、これらエコーチェンバーや確証バイアスといったものによる思い込み、判断のブレといったものは日常的に誰でも起こりえるものですので…自分を見返し、冷静さを失っていないかと点検する気持ちはもっておきたいものですね。
おわりに
と、今回は陰謀論を信じるときに関連しやすい人の性質や環境、状況といったものを挙げてみました。
文中でも書いている通り、これらの他にも複雑な背景が絡んで起こるわけですが…共通して言えることとして、疲労や不安状態だと客観的に状況を見る力も働きにくくなりやすいということが言えます。
人の脳が起こしやすい、誰にでも共通した特性であるからこそ…可能な限り休息をしっかりとり脳が冷静でいられる状況を作るというのも大切ですね。
また、陰謀論や特定の主張を信じることは個人の自由ですが、実際にそうした方が身内などにおられ苦労している、という方もおられるかもしれません。
そうしたときに何か対処できることがあるのか…コラム内で触れられる範囲でですが、近日書かせて頂きたいと思います。
まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん