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【9才の壁】実は小学校中学年はもっと精神的サポートが必要な時期なのかもしれない

こんにちは、まのです。
今日のテーマは小学校3年生~4年生、つまり中学年と呼ばれる時期の心理、発達のサポートについてです。

なぜピンポイントにこの時期を取り上げるかというと、実はこの時期ってエアポケットといか…これまでの発達のための支援、あるいは小児精神医療の分野において軽視されがちなところだったりするのです。

軽視、というと語弊がありますが、後に出てくる理由などがあってそれまで発達障害などで相談を続けていた受診先や、医療スタッフの目が途切れがちな時期だったりします。
ですが改めて考えてみると、この時期こそ必要に応じてサポートをすることがお子さんの将来にとって大切なのかもしれない…ということを感じたため今回話題に挙げさせて頂きました。

小学校の中学年でサポートが途切れやすい理由

そもそも、サポートが途切れやすい時期があるというのが不可思議に思える話かもしれません。
全く病院にかかったり相談機関に関わる機会が無かったお子さんはまだしも、中学年以前から病院などでサポートを受ける機会があったのになぜ途切れてしまうのか…?

これには大きく言って二つの理由があると思います。
1 医療機関が受け入れられる枠の問題
2 問題の顕在化のしづらさ

それぞれ見ていきましょう。

1 医療機関が受け入れられる枠の問題
まず挙げられるのは、発達障害など療育的サポートが必要なお子さんをみられる枠の問題です。
たとえば現在、地域にもよりますがお子さんの発達に関する相談をするために小児科を受診しようと思った場合、半年以上待たなくては予約がとれないということも珍しくありません。

幼児期のお子さんが半年も経てば、お子さんご本人や周囲の状況も大きく変わってしまっていそうですが…。とはいえ小児科や療育センターの予約がパンク状態なのは現実なわけで、なぜもっと早く診てもらえないんだと責めるわけにもいきません。

3才児検診であったり、園の生活の中で見えてきた課題やご家族の方の気づきなどによって、療育が必要なお子さんの多くが幼児期の受診につながっています。
早期に気づき、適切な対応ができるという意味では良いことの方が多いと言えるでしょう。

ただ、初診の予約がとれないことからも分かるように、既存のお子さんたちで病院の枠はパンパンです。
2才から受診が始まったお子さんが18才まで診察を受けるとしたら16年のお付き合いになるわけですが、残念ながらそこまで受診を継続するとなると強い必要性があるお子さんに限定となっていきます。優先順位をつけていかなくては病院も機能できない状況というわけです。

お薬の調整が必要だったり、場合によっては家庭での生活が難しいような状況であったり…。
月1回だった受診を三か月に1回にして頻度を減らしたり。

お薬を使わず行動調整やハビリテーションといったサポートを受けているお子さんの場合、年齢で区切られてバサッと終了せざるを得ない場合も多々あります。
たとえば「うちの病院は小学校に上がると同時に診察も終了となります」というルールがあったり、「二年生までは対応できます」などなど。

本来ならば各お子さんに対しての必要性に合わせて終了時期も決められると良いのですが、これはこれで公平な判断をどうつけるかという課題もあります。
あるいは、終診という時期が予め決まっていることで1つの区切りにできるという見方もあります。保護者の方にもよりますが、受診やハビリテーションが終わるというのは不安なことでもあり、小学校以降も継続したいというご希望は少なくありませんので…
個別に終了時期を判断するよりも、予め「当院は〇〇まで」と決まっている方がお互いにそれに向けての準備もしやすいというメリットもあるでしょう(苦肉の策とも言えますが)

こうした事情により、小学校三年生になる頃には多くのお子さんが医療機関の受診を終えている、とならざるを得ないところがあります。
もちろん必要によって小学校内の特別支援級や通級、校外では放課後等デイサービスや特別支援学校といった資源があります。
これらにバトンタッチをしていくことになるわけですがこれはこれで、各機関の枠や質といった課題がありますので…良質なサポートを受けられる場合ももちろんありますが、そういった担当者の方や資源と巡り合えるかは運次第になってしまうのも否めないという現状があります。

2 問題の顕在化のしづらさ
小学校中学年のサポートが手薄になりやすい事情として、もう1つは問題が影に隠れやすいということが挙げられそうです。
3年生~4年生というのは、後に挙げますがそれまでの小学校低学年とは違い人間関係や学習内容など、より複雑で大きな変化が起こっていく時期です。

この時期、実際に自己肯定感の低下などその後につながってしまいかねないような負荷がかかることも多々あります。
ですが当の本人であるお子さんも、また親御さん側もその急激な変化にまだまだ理解が追いつきません。
お子さん自身は言葉にできないような不調を感じつつも、訴える術が無かったり誰かに頼っていいという発想に至れなかったりする。
保護者の方も、違和感を感じつつもそれが成長痛のような一過性のものなのかじっくり腰を据えてお子さんと向き合ってあげる必要があるものなのか判断が難しかったりする(専門職でも難しいところです)。

こうして小学校中学年はどうにかこうにかやっていったものの、高学年になっていよいよ抱えきれなくなり病院を受診、専門的なサポートが再開(開始)されるといったケースが多いのかなと。
そういったこともあって、小学校高学年~中学生へとまた受診件数が増える時期でもあります。つまり、最初に挙げたような「小学校中学年はエアポケットになりやすい」という状況が生まれるんですね。

小学校中学年は哲学的な時期

「小学校中学年は哲学的な時期」
これは僕がいつもお世話になっている小児科医の先生が言われていたことです。なかなかにインパクトのある言葉で記憶に残っています。

9才の壁という、発達や教育に携わっている人たちの間では有名な言葉があります。
主に学習面で使われる言葉で、それまでの3+5=8といった機械的な学習では対処できない、抽象的であったり論理的な思考というものが授業にも入ってくる時期ですね。
国語であれば文章を正しく理解したり、算数であれば分数など独特のルールを理解して応用させる力が必要になってきたり。

発達の凸凹があったりすると、この応用という面で困難さや周囲のお子さんとの差が顕著になる場合があります。
僕も中学校のときに数学が苦手でさっぱりだったから分かるのですが、一旦解き方についていけなくなったらその後の授業全てが理解できなくなるような感じですね。

さらに人間関係も複雑になっていきます。
僕は言語聴覚士として臨床をしていた頃、発音や吃音など言葉の悩みを抱えている子の保護者の方によく言っていたことがあります。
「小学校二年生ぐらいまでは本人も周りもあまり気にしていないことが多いので、大人があまり神経質にならなくても良かったりしますよ」と。

これには2つ意味があり、1つは「小学校二年生ぐらいまでなら多少話し方が他と違っても、友人関係や自尊心に差し障る可能性は低いので焦らずいきましょう」という意味と「三年生前後からは本人が傷ついたり周囲のからかいの対象になってしまう場合があります」だから、遅くともそれまでには治していけるように(発音に関しては)しましょう。というところです。

吃音の場合は治すというよりも年齢に合わせてまた違うアプローチになっていきますが、それはここでは割愛させて頂くとして。

実際、小学校低学年ぐらいまではケンカをしてもあっさり仲直りができたりみんなでワイワイやろうぜとシンプルな人間関係が主なんですが。
三年生ぐらいから徐々に大人びてくるというか…性差もより意識され始めますし、グループが固定化されていったり自分と他人の違いに敏感になる時期でもあります。

こうしたことが絡み、見出しの「哲学的な時期」という言葉につながるんですね。
個人の個性、能力の違い、生き方の違いというものを意識しはじめ、自分が何者なのか考える。「自分は自分なんだ」という感覚が芽生えてくる。

そういったとても繊細で多感な時期は、小学校高学年~中学生といういわゆる思春期という時期が連想されますが、その手前から実は始まっているというわけです。
考えてみればそりゃそうか…と思いつつ、盲点になっているところではないでしょうか。

だからこそ、今一度小学校中学年という時期への認識を新たにする機会として、今回この話題を取り上げました。
サポートが必要な子がなんとなくエアポケットだから、という理由であぶれてしまわないように。
ことが深刻化する少し手前で周囲の大人が気づいたり、専門家が察知できるという機会が増えると良いなと願います。

まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん

まの profile (当相談室のカウンセラー) 

資格:言語聴覚士
   公認心理師
   正規keep safeインストラクター修了

◎経験領域 (病院勤務時代)
・急性期小児~成人リハ (失語症、嚥下障害、高次脳機能障害)
・1歳~18歳までの支援  (発達障害、ことばの遅れ、(構音)発音、吃音、緘黙、学習障害、嚥下障害)
・重症心身障害児・者リハビリテーション
・保育園へ月1回訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
・学会での発表経験複数回あり

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