こんにちは、まのです。
今回は以前にお話しした学習認知心理学のお話し第二弾です。
ちなみに前回の記事はこちらからどうぞ↓
ものすごく大雑把なまとめとしては以下のイラストも交えご参照ください。
要するに…
・人の行動は、行動後に良いことがあったか嫌なことがあったかによってかなり左右されている。
・学習認知心理学を知ると、自分や人の行動をコントロールするために大切なことが分かる。

といった次第です。
行動をコントロールというとなんだか洗脳のような怖い響きを感じてしまうかもしれませんが、もっと身近な話で…たとえばダイエットの習慣づけをしたいけども難しいとか。お酒を飲むのをやめたいんだけどやめらない。
といった誰でもありがちな経験の裏で起きている仕組みを知ろう、ということです。
そして、では一体どうしたら良い習慣をつけていけるのか、あるいは悪い習慣を減らしていけるのか。
学習認知心理学を知ることで、そういったお悩み解決のタネにたくさん出会えるというわけなんですね。
より効果的な報酬を知ろう
さて今回のテーマはこちらです。
報酬、というのは↑の記事やイラストでもご紹介してきた強化子とも呼ばれるものです。
行動後の良いこと…たとえば人に褒められるだとか、達成感を感じただとか、ご褒美におやつをもらえたとか。
それらの強化子についてですが、今回は身近な言葉としてイメージしやすい報酬という言葉を使います。
なお、負の強化子というものもありますがこちらは前回説明していますし、今回触れるとややこしくなるので割愛させてください(気になる方は↑のリンクから前回の記事を読んで頂けますと幸いです)。
さて、誰しもたとえそれが些細なことであっても、人は無意識のうちに行動後に起きたことの良し悪しから影響を受けています。
たまたま買ったアイスが美味しかったからまた買ってみたくなった、勇気を出してLINEをしたら快い返事が返ってきたのでまたしたくなったなどなど…。
例を挙げればキリがないですが、ただ、こうした報酬にも効果が強いものとそうでもないものがあります。
たとえばそれは、行動をしてから報酬が来たタイミングであるとか(すぐなのかしばらく経ってなのか)。
あるいは、報酬の強さは強ければ強いほどいいのか?であるとか(100円のお小遣いをあげるより1000円のお小遣いの方が強化につながるのか)。
はたまた、いつもご褒美が安定してもらえるのと、もらえたりもらえなかったりするのではどちらの効果が強いのか?
などなど。
こうした違いによって、同じご褒美があるにしても行動の定着力が変わってきます。
よく、ダイエットや勉強をした後には自分にご褒美をあげると良い、と言いますね。
これは一理あるのですが、どうせご褒美をあげるのであればこうした仕組みを知って取り入れることで、行動の習慣化をより強いものにすることができます。
では実際にどんな報酬の効果が強いのか、次はそれをご説明します。
人はランダムな報酬に弱い
もう一言で言ってしまうとこれです。ランダム性のもつ魔力。
頻度や強度、タイミングについて上で少し触れましたが、結論はこれになります。
でもこれ、本当に?と疑いたくなりませんか?
なにせ普通に考えたら、毎回1000円のお小遣いがもらえるお手伝いと、毎回くじを引いて0円~1000円がランダムにもらえるお手伝い。
どちらの方が得かと思えば、断然毎回1000円がもらえるお小遣いです。
それなのにくじにした方がお手伝いが定着するだなんて…と思いたくもなるわけですが。
ですがこれ、実際に比較するとたとえ金額は安くなるはずであってもくじ引き版の方が長続きします。
原理としては、馴化(じゅんか)というものが生じるためです。
人やあらゆる生き物は、同じ刺激を何度も受けるとだんだん脳が反応しなくなっていくんですね。簡単に言えば飽きや慣れ、ということです。
つまり、最初は1000円のお小遣いで確かに喜んでいたはずが、二回目三回目と繰り返していくうちにあまり嬉しくなくなっていき…
次第に飽きてしまってお手伝いをする習慣が無くなってしまう、というわけです。
ところがこの馴化は、刺激が変わることでリセットできます。
くじ引きによって予想がつかないことで毎回違う刺激となり、同じ1000円でも脳が強く報酬として感じるわけです。
※ 余談ですが、本当は毎回1000円のお小遣いの方がお得なわけで、その場合でも脳が刺激を感じられるようにすればベストですよね。その場合はちょっとした工夫で自分なりに達成感を作り上げることがコツです。買いたいものと目標金額を明確にして、さらに1000円を目に見える貯金箱で管理したりなどですね。
ハンフレイズ効果とは
さて、せっかくですので少しだけ専門用語もご紹介しておくと、これらはハンフレイズ効果(強化矛盾)といった言葉でも説明されます。
ハンフレイズ効果について説明する前に、消去抵抗という言葉を説明させて下さい。
消去の『消去』とは、人が行動を学習した後に報酬が無くなったことによってその行動を失ってしまうことを指します。
ダイエットをするために運動を続けていた⇒体重が減る喜びが報酬となった⇒ある日から体重が減らなくなった(報酬が無くなった)⇒運動もやめてしまった
というような流れのとき、運動という行動が消去されてしまったと言えるわけです。
行動学習の中にも消去が起きやすい条件のものと、消去が起きづらいものとがあり…消去が起きやすい学習を消去抵抗が低いと言います。
反対に、消去が起きにくいものを消去抵抗が強いと言います。
つまり、せっかく身につきかけた習慣を持続させたいなら消去抵抗が強い学習方法をとった方が良いわけです。
さてここで登場するのがハンフレイズ効果という言葉です。
先にも少し触れましたが、人は一定の報酬をもらい続けると報酬の効果が弱くなってしまいます。
逆に言えば、刺激を維持するためには報酬はあったりなかったりの方が良いわけです。ランダム最強説ですね。
そしてこの効果は、報酬が無くなった後の消去抵抗にも影響します。
ハンフレイズ効果とはこの、
・一定の報酬で獲得した行動 ⇒ 消去抵抗が低い
・ランダムの報酬で獲得した行動 ⇒ 消去抵抗が強い
という違いを表した言葉になります。
これは不適切な行動をやめさせたいときも同様で…
たとえば子どもが後片付けをしなかったとして、毎回叱っていると罰の効果が薄れてしまいます。慣れてしまうんですね。
そうすると、仮に一時的には渋々片づけをしたとしても、叱ってくれる人がいなくなると片づけという行動は消去されてしまう可能性が高いということになります。
ではどうしたらいいか、というのは今回扱う話題だけでは説明しきれないため次回以降のお話しとさせて頂きますね。
今回は、一定の誉め言葉や叱るという行為は強化として弱く、ランダムであるほど強いというところを覚えて頂ければ幸いです。これはもちろん自分の行動についてもそうなので…再三出ているダイエットや節約、勉強の習慣づけなどの際に意識ができると有効活用につながるかもしれません。
たとえば僕は、大変な仕事を終えたときなど美味しいものを食べて良いと自分に設定していますが、メニューや行くお店に変化をつけるようにしています。あえていつもの定番は作らず、そしてときどきご褒美にさらにワンランク上のデザートやトッピングをつけてプチ贅沢をしてみたり。
本格的にランダムにする場合はくじ引きのアプリを使うなどの方法もあるかと思います。僕は面倒なのでそこまではせず、気まぐれに身を任せていますが(笑)
ささやかな工夫で、自分にあうスタイルを見つけられるとそれだけでも習慣づけがしやすくなるんですね。
ギャンブルもSNSもソシャゲもランダム報酬で溢れている
最後はほとんど余談となるお話しなので気軽にご覧ください。
タイトルにもありますが、人がハマりたくないと思っていてもなぜかハマってしまいがち三人衆…それがギャンブル、ソシャゲなどのゲーム、XやインスタグラムといったSNSではないでしょうか。
ここまで読まれた方はピンとくるものがあるかと思いますが、これら3つは共通点してランダム報酬が多いということが挙げられるんですね。
ギャンブルはまさしくそのままですよね。パチンコにしても競馬にしてもカジノにしても…。
いつもご褒美があるわけではなく、ときどきドカッと当たりが来たりする…。大半の方はトータルで負けているにも関わらず、止めたくても止められない。
これはまさに人の学習の性が詰まっている場面です。
そしてソシャゲ(ソーシャルゲーム)。
カードをたくさん引いて、その中にノーマルがあったりSSR(スーパースペシャルレア)があったりします。これぞまさしくランダム報酬。
また、これはどこまで意図的なものか分かりませんが、無料スマホゲームの多くは休憩という要素が加わります。
途中でプレイを中断させられ、続けてゲームをしたいなら課金して体力を購入しなさいといったシステムです。
これにより、中断という『行動を継続できない』という要素もより学習を強固にするのかもしれません。
課金をして継続するにしたって、ほとんどの方は無限に課金はできないわけですからね。
やむなく中断、というサイクルがまた、馴化を防ぎ消去抵抗を強くしているという可能性はありえそうです。
最後にSNS。
これの場合の報酬は、投稿に関して言えばイイねやコメントといった周囲の反応になります。
たとえば、イイねも毎回数が違うから人は「次はどうやったらたくさんイイねがつくだろうか…」と考えるわけですね(もちろんあまり気にしていない方もおられますが)。
最近ではイイねやコメントが多いとAIが注目されている投稿として認知し、より多くの人の目に触れやすくなるという効果もあります。
いずれにしても投稿をして反応がゼロだとなかなか続かないということからも分かるように、これら人からのリアクションというのは報酬としての力をもちます。
SNSに限らずですけどね…リアルの場面でも、冗談を言って周りが笑ってくれたらまた言いたくなりますが、誰からも無反応であれば二度と言いたくはないでしょう。
(無視には最強の消去効果があります。この話はまたいずれ)
ちなみについSNSを見てしまうのは何が報酬かといえば、あらゆる投稿による刺激そのものです。
快適な刺激も、不快な刺激も人の脳は報酬として感じます。
不快な刺激を報酬として感じるのは、これまでの話と矛盾しているように思えるかもしれませんが…脳にとって大切なのは、何かしらリアクションがあるということです。
SNSという、指先1つの小さなコストで得られるリアクションは、たとえ多少不快であっても脳は刺激として求め続けてしまいます。
また、その中でときどき笑える投稿や癒される投稿があるため、ランダム効果も強いわけですね。
といったところで…いかに世間で定着しているものが、人の本能に働きかけるようにできているか感じて頂けたでしょうか。
たとえ頭で分かったとしても、そこを制御して抜け出したり良い習慣へ変えていくというのは容易いことではありませんが…。
とはいえ、まずは知ることが第一歩です。
対戦相手を知れば、立ち合いの仕方も分かってきますのでね。
今回はここまでにして…またいずれ、この続きを書きたいと思います。よろしければ引き続きご覧頂けると嬉しい限りです☆
まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん
この記事を書いた人:まの (まのぱぺ相談室代表)
【保有資格】
言語聴覚士 (国家資格) / 公認心理師 (国家資格) / 正規Keep Safeインストラクター修了
【主な経歴・実績 (臨床経験10年以上)】
- 元・看護専門学校 非常勤講師(リハビリ概論/言語・高次脳機能障害などを担当)
- 急性期病院での小児~成人リハ (失語症、嚥下、高次脳機能障害)
- 1歳~18歳までの支援 (発達障害、ことばの遅れ、吃音、緘黙、学習障害など)
- 重症心身障害児・者リハビリテーション
- 保育園へ毎月訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
- 学会での発表実績あり (令和8年も発表に向けて準備中!)

