フリーオペラント本

教えるより「聞く」だけで子どもは伸びる?発達障害支援の名著『フリー・オペラント法』に学ぶ安全基地

あけましておめでとうございます。
まのぱぺ相談室のまのです。新年最初の挨拶ですし、改めて名乗ってみました。

なんだか近未来な響き(?)の2026年がスタートしましたね。
旧年中は多くのご縁をいただき、本当にありがとうございました。
本年も皆様の心の「安全基地」となれるよう、丁寧な活動を心がけていきたいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年1回目のコラムということもあり、ちょっと「故きを温ねて新しきを知る」的なことをしてみたいと思いまして…今回は僕の「原点」とも言える一冊の本をご紹介したいと思います。

これまでTikTokなどのショート動画では軽く触れたことがあったのですが、これだけのボリュームで言語化してご紹介するのは今回が初めてかもしれません。

僕がまだ駆け出しの言語聴覚士だった頃に臨床の壁にぶつかり、悩み悩んで明け暮れていた時に支えてくれた「バイブル」のような本です。

今後も書籍紹介はしていきたいと思っているのですが、その最初を飾るのはこれしかない…と僕の中で言える、大切な一冊です。

紹介したい本

紹介したい書籍というのはこちら!

『広汎性発達障害児への応用行動分析―フリー・オペラント法』 (著者:佐久間 徹

2013年出版の本ですが、内容は今の臨床にそのまま適用できるものばかりです。
現在は神経発達症という名が正式名称ですが、当時は広汎性発達障害という診断名が用いられていました。

この後に自閉スペクトラム症に名前が改められ、さらにそのあとに神経発達症へと統合されていったわけですので…こう振り返ると短期間にいろいろと変わったものです。

今やすっかりPDD(広汎性発達障害の略称)は誰も使わない言葉となりました。

なんてこともあったと振り返りつつ、ひとまず書籍のAmazonのURLを貼っておきますね。
ちなみに当サイトはアフィリエイトなどはやっておりませんので、こちらから購入されても僕には一円も入りませんので…その辺りは気兼ねなく(?)ご参照ください。

https://amzn.asia/d/3OjEKms

「厳しくしつける」か「自由にさせる」か。迷っていた2年目

この本に出会ったのは僕が言語聴覚士としてお子さんの療育に関わり始めて、1〜2年目の頃だったと記憶しています
当時は自分の臨床スタイルや方針について、ものすごく悩んでいた時期でもありました。

療育の現場では、しばしば主導権(コントロール)が議論になります。

「小学校という集団生活に入れば、我慢しなきゃいけないことが増える」
「だから今のうちにセラピストが主導権を握って、座らせて、厳しくしつけないといけない」

当時よく臨床スタイルを相談しあっていた同期からはそんな話も聞きました。
というより、同期もまだド新人と言ってよい時期なので、それはどちらかというと同期が勤めている病院の考え方でした。
「うちのところの先輩は、絶対に子どもに主導権を握らせてはダメって言うよ」とよく聞いていたものです。

でも、僕の中には違和感がありました。
そういった話も聞き、自分なりに厳しさや管理するシチュエーションを作ってみるのですが、「これが子どもの成長につながっているのか…?」という疑問は終始ぬぐえなかったのです。簡単に言えば、手ごたえが無かったんですね。

補足しておくと、僕は主導権をセラピストが握るスタイルを否定しているわけではありません。
そのどちらのスタイルにもメリットとデメリットがあると思っており…まず大前提として大切なのは、セラピストが自分の方針に納得して行えているか。また、そのセラピストがもつカラーに合っているか、というところも大切なのではないかと思っています。

セラピスト自身が納得していないやり方では、どんな良い方法とされるものでもうまくいくはずがないと思いますのでね。

そんなこんなで、
「もっとお子さんの主体性を大事にしたい」「締め付けるのではなく、その子の能力が自然と発揮できるような環境を作りたい」

けれど、それを貫くことで「わがままな子になったらどうしよう?」という不安もあり、厳しさとお子さんの尊重という間で揺れ動いていたのです。

そんな時に出会ったのが、佐久間徹先生のこの本でした。

応用行動分析(ABA)のイメージを覆した「フリー・オペラント」

この本の著者の佐久間先生は、そもそもは行動分析学の専門家です。

「行動分析(ABA)」と聞くと、一般的には「アメとムチ」をイメージされるかもしれません。 良いことをしたら褒める(報酬)、悪いことをしたら罰を与える(消去)。
そうやって、大人が子どもの行動をコントロールする……そんな印象を持っている方もおられるかもしれませんね。

それも一つの側面として捉えられなくはないのですが、この本で語られるフリー・オペラント法は、そのイメージを良い意味で裏切ってくれます。

大変僭越ながら、佐久間先生の考えを僕なりにこの本から抜き出したところ以下のような言葉になりました。

「子どもには本来、伸びる力がある。なのに大人が余計な干渉(コントロール)をして、その機会を奪っていないか?」

これは今でも僕が、臨床をしている自分に対して定期的に投げかける言葉です。

佐久間先生は本の中で、しつけという考え方がもたらすリスクを丁寧に説いてくださっています。

決して、しつけが必要ないと言っているわけではありません。
命に関わることや、どうしても必要なこと以外は徹底的に「環境」を整えることに注力し、あとは子供の自発的な動き(フリー・オペラント)を待つ。

大人が教えるのではなく、子どもが「やってみたい!」「楽しい!」と動いた瞬間に、適切なフィードバックを返す。
そうすることで、子どもは「やらされる」のではなく、「自ら学ぶ」ようになるというのがこの技法の考え方の根幹となっている部分です。

「教え上手」ではなく「聞き上手」になること

そしてもう一つ、この本の中で非常に大切にされている視点があります。それは「教え上手ではなく、聞き上手になりなさい」という教えです。

「教え上手」な先生は、確かにその場では子どもを上手に導くことができます。
しかし、それでは子どもは「先生がいるからできる」状態になってしまうかもしれない。

いつかは先生のもとを離れ、社会に出て行かなければならない時が来ます。
その時、指示してくれる先生がいなくなったらその子はどうなってしまうでしょうか。
「教え上手」だけでは、子どもの本当の自立には限界があるという考え方ですね。

一方で「聞き上手」な先生はどうでしょう。 ここでの「聞く」とは、単に耳で言葉を聞くことだけではありません。

  • お子さんの小さな視線の動き
  • ふとした表情の変化
  • 何気ない仕草

そういった言葉にならないサインも汲み取り、「あ、今これが気になったんだね」「それが楽しいんだね」と、大げさでなくていいので、そっと反応を返してあげること。

そうやって共感してもらえると、子どもは「自分の気持ちが伝わった!」「もっとやりたい!」と感じ、自らチャレンジしようとする意欲が湧いてきます。
「聞き上手」な関わりこそが、子どもの「もっとやりたい」という主体性を伸ばし、結果として社会で生きていくための土台を作ってくれるのだといいます。

これは僕も強く共感する考え方です。また、こうした大人側が受け身になる姿勢は、お子さんの自己肯定感を育むうえでにもとても重要です。

お子さんの成長を信じるという言い方もできるかもしれません。大人側ができるのは、お子さんがチャレンジできる環境を整えること。失敗を悪ととらえず、チャレンジできたこと自体を認め支えること。

失敗を消去すべきものとして考えるのではなく、チャレンジできる環境を作る…。
行動分析の専門家である佐久間先生がたどり着いたのが、子どもを制御することの真逆ともいえる発想だった。

そしてその中に、大人側がきちんと子どもを認め向き合うという形で行動分析の形が生きている。

なんとも柔軟であり、どれほどまでに目の前のお子さんたちと向き合ってきたのかが伝わってくるような、実践的な考え方だなと思います。

「人が人を好きになる」ということ

最近はアドラー心理学などを中心に、「褒めることの弊害(条件付きの承認になってしまう恐れ)」も指摘されています。専門用語では条件付きストロークと言ったりします。

確かにこれは一理も二理もある指摘であり…お子さんの存在自体を受け入れるという考え方はとても大切です。

「〇〇できてえらいね」が行き過ぎると、成果主義になってしまうという恐れですね。
お子さんが周囲の反応ばかり優先し、自分がしたいことや考えたことを大切にしなくなってしまう。それは将来的な自己肯定感の低下につながる恐れもあります。

実際、「ご褒美がないと動かない子になるのではないか?」「顔色を伺う子になるのではないか?」そう心配される親御さんもいらっしゃると思います。

僕がこの本を好きな理由の一つが、そのバランス感覚です。
単に誉め言葉などで持ち上げるのではなく、「人が人を好きになる関わり」を根底に置いているんですね。

セラピストや大人が、子供にとって「管理者」ではなく「一緒にいると楽しいパートナー」になること。
大人が子どもを好きになり、子どもも大人を好きになる。
その関係性の中で行われるコミュニケーションこそが、子供の言葉や社会性を一番伸ばしてくれるのだと、この本は教えてくれました。

「北風」ではなく「太陽」が大切

この本で学んだ姿勢は、現在僕が行っている大人の方へのカウンセリングや、愛着障害のご相談にもそのまま通じているように思います。

僕はよく北風と太陽に例えるのですが、無理やりコートを脱がそうとする(行動を変えさせようとする)北風のようなアプローチは、時に反発を生み心を閉ざさせてしまう恐れがあります。

対して、ポカポカと暖かく照らす太陽のようなアプローチ。 つまり、「ここなら安心だ」「失敗しても大丈夫だ」と思える「安全基地」を整えること。

大人が(あるいはカウンセラーが)聞き上手な安全基地になることで、子どもも大人も、「ちょっとやってみようかな」 「失敗したけど、もう一回トライしてみよう」 と、自分の足で歩き出すことができます。

本当に必要な時だけ手を差し伸べ、あとはその人の持つ「心」の力を信じて待つ。
カウンセリングとしては基本中の基本とも言える考え方ですが、言うは易く行うは難しというやつで…。

若かりし頃の僕は「本当にそれでいいのか」と迷い、指導的な関わりや正論も重要なのではないかと悩んだこともあります。(もちろんそれらが実際に重要なときもありますしね)

このあたりのバランスというか、両方正解と言える中でどのように自分の臨床に反映させていくのか。その臨床家の臨床観というものを1~2年目という中で培っていうくのだと思いますが。
僕はその大切な時期に佐久間先生の本と出会い、それをベースに臨床をしてきたことで今の自分の臨床観が出来上がってきたのだと思っています。

そして、それがあったからこそ、今カウンセリングの中で相談者さんの心の動きを信じて待つということが為されていると思っているので…本当に早い時期にこの本に出会えてよかったと思っています。

ぜひ読んでみてほしい一冊です

少し専門的な内容も含みますが支援者(セラピストや保育士さんや先生方)はもちろん、子育てに悩んでいるお父さん・お母さんにも、たくさんのヒントがある本だと思います。

「つい、ガミガミ怒ってしまう」「子供のためを思って言っているのに、うまくいかない」

そんな時は、一度この本を手に取って、「教えるのではなく、聞く(汲み取る)」という佐久間先生の考え方に触れてみるのも良いかもしれません。

それこそ言うは易く行うは難しで、親だって人間ですのですぐに振る舞いを変えられるわけではありませんが…。それでも、何かしらの発見であったり、少し気持ちが軽くなるような助言に出会えるのではないかなと思います。

佐久間先生の教えも踏まえながら、2026年もまのぱぺ相談室はそんな「聞き上手」なスタンスで、皆さんの伴走者であり続けたいと思います。
なんだかうまくまとまった気がしますのでこの辺りでおしまい!

本年もどうぞよろしくお願いいたします☆

まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん

この記事を書いた人:まの (まのぱぺ相談室代表)

【保有資格】
言語聴覚士 (国家資格) / 公認心理師 (国家資格) / 正規Keep Safeインストラクター修了

【主な経歴・実績 (臨床経験10年以上)】

  • 元・看護専門学校 非常勤講師(リハビリ概論/言語・高次脳機能障害などを担当)
  • 急性期病院での小児~成人リハ (失語症、嚥下、高次脳機能障害)
  • 1歳~18歳までの支援 (発達障害、ことばの遅れ、吃音、緘黙、学習障害など)
  • 重症心身障害児・者リハビリテーション
  • 保育園へ毎月訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
  • 学会での発表実績あり (令和8年も発表に向けて準備中!)

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