こんにちは、まのです。
前回の記事とつながるお話しもあったりするので、もしご興味があればそちらも読んで頂けると幸いです。
すごく簡単に前回の記事をふり返ると…
・医療的ケアにおいてエビデンスは当然大切
・ただ一方で、エビデンスに縛られすぎると相談者さんやカウンセラーそれぞれの個別性を軽視することになるのでは?
・カウンセリングにおいて、カウンセラーが忘れてはいけないこと
といった流れで書いております。
その中で、セオリー通りの答えが得意な存在として浮かぶのが昨今進歩を続けている生成AIの存在です。
というわけで今回、AIはカウンセラーとして成り代わることはできるのか?ということについて書いてみたいと思ったわけです。
前回の記事の最後で少し書いているので、最初に結論を挙げておくと僕は「僕が現役世代のうちはカウンセラーが不要とはならないだろう」と予想しています。
僕が現役世代のうち、というものを具体的に考えると2055年前後ぐらいでしょうか。
情報が目まぐるしく移り変わる時代ですが、そのころまで経験と最先端の知識とを併せ持ったカウンセラーであり続けたいものです。
では次の項目から、そう簡単にAIはカウンセラーに成り代わらないのでは。と僕が予想する理由について書いていきます。
pickup AIやカウンセリングに関する記事
追加記事 AIによるカウンセリングのリスクを考えた
※ 本記事を書いてからしばらくして書いた記事です。
こちらでは、chatGPTなどに相談をしている方のお話しを聞く中で感じた、リスク面について書いた記事となっております。
ご興味が湧いたという方はこちらもどうぞ☆
理由1 確率の高い答えはできるだろう、けど…
さて、ここからがこの記事の本編です。
AIによるカウンセリングによって、人のカウンセラーは不要となるのか?というテーマ。
これに対し、僕はまだ当面(数十年ぐらい?)は人のカウンセラーの役割は大きいと考えます。
まず理由1つ目は、セオリーから外れる状況や例外への対応についてです。
現時点での生成AIというのは、ときにAI自身が思考して答えを出しているようにも見える高度なものになっていますが、実際には思考しているわけではありません。
人間が作ってきた膨大なデータをもとに、このパターンであればこういう答えである確率が高い、として編み出しているに過ぎません。
ですので前例があるものは生み出すことができますが、データの少ないものほど正確性が怪しくなったり答えを出すこと自体が難しくなったりします。
僕が想像するに、カウンセリングのような極めて個別性が高くデータ化しにくいようなものでも、いずれ「こういう状態の人にはこういう回答が正解である確率が高い」と、本物のカウンセラーさながらの受け答えをするAIはできるのではないかと思います。
ただこれはあくまで確率が高い回答であって、目の前のその方が本当に求めている受け答えとなるのかはまた別ではないかなと思うのです。
たとえばEMDRという技法があります。
これは動かされる指を見て眼球運動を促して行う方法で、実際にPTSDへの有効性が認められています。エビデンスがあるわけです。
ですが先日、このようなお話しを聞きました。
あるカウンセラーがEMDRを行うわけですが、相談者の方が酷く憤慨されたと。
「私が抱えてきた辛さを、指1本でどうにかしようというのですか」と興奮し続行が困難な状態に陥ったというのです。
前回の記事にも通ずる話ですが、カウンセリングが「〇〇という状態の方には△△の治療が良い」という1対1の理屈では語れないことが端的に表現されたエピソードではないかなと思います。
仮にAIが一番確率の高い回答を返していくシステムであれば、このシチュエーションでやはりEMDRが導入され相談者の方との信頼を損ねてしまう可能性は高いのではないでしょうか。
とはいえAIも進化していく中で、膨大なデータを集めこの辺の精度は向上していくかもしれません。
「PTSDの方にはEMDR」⇒「でもその前に信頼関係の構築」⇒「この傾向の方はEMDRよりも他のアプローチが良さそうだ」
という風になっていけば、いよいよ人間のカウンセラー顔負けの、極めて高い確率で相談者さんが求める回答を出せるAI誕生といきそうです。
ですがそれでも、僕は人間のカウンセラーの必要性というものが上回るのではないかと思っています。
その理由は2つ。1つは↓の理由2の項目で挙げるものです。
そしてもう1つは、やはりどこまでデータを重ね続けても出せない、人間の閃きや相性、例外というものが存在するのではないかということ。
なにかデータでは語れない、あまりに想定外の例がないかと考えていたら思い出したのですが…ちょっと下ネタの話なので苦手な方は理由2の見出しへ飛んでください。
あれは、僕が昔勤めていた職場のA先輩が鬱っぽくなってしまったときの話。
当時は医療の仕事に就く前でしたので、鬱に対して専門知識はありませんでした。
A先輩が上司に「どうにも鬱っぽく、このまま仕事を辞めようかと思っています」と相談している場になぜか僕も立ち会っていました。
そのときの上司の返しがいまだに忘れられないのですが…
「あんた、ちん〇んは勃つんか?」
と真剣に聞くんです。なんの話やねん、って感じですが極めて真剣です。
A先輩は答えません。答えられないということはまあ、そういうことなんでしょう。すると察した上司が。
「勃つなら鬱じゃない!甘えるな!」
と一理あるような無茶苦茶なような理論で喝入れをしておりました。当時、たしか新卒だった僕は普通に感心していました。「そういう見分け方があるのか…」と。いや、素直すぎるやろ。
今思えば根拠も道理もない主張ですが、驚くべきことにこの喝入れがA先輩に刺さりに刺さったようで。
「そうか、自分は鬱じゃない」
と思ったのかなんなんだか、それ以来A先輩は復活を遂げ仕事を辞めることもなく元気にされております。
…これは上司にツッコむべきなのかA先輩にツッコむべきなのか……。
ちょっとよく分からなくなりますが、いずれにしても言えるだろうことは、この喝入れはAIには出せない選択肢だろうということです。
困ったら勃つか勃たないかで鬱を見極めろ、勃つなら恫喝したら鬱が治る、というデータがたとえ少数であっても集まるようなら世も末ですので。
なんか本当に汚い話で申し訳ありませんが…
AIにできず人間だからこそ出せる答えがきっとある、というお話しでした。ここまで極端な話でなくてもきっと!です。
理由2 脳科学的な背景
2つ目の理由は脳科学な視点からです。
イギリスの研究グループで行われたという、ある実験がありまして。
チェスをしているときの人の脳をfMRIという機械で測定したんですね。
fMRIは簡単に言えば、脳の血流などを観察することができ、「話すときには脳のこの部分がよく動いている」という風に脳の活動を見えるようにしてくれるMRIです。
さて、このイギリスの研究グループがチェスを通じて何を調べたかというと…
相手が人間であると言われたときと、相手がコンピュータだと言われたときでの脳の活動の違いについてです。
2つを比べた結果、相手が人間であると言われたときだけ活発に動いている脳の領域がありました。
それは前部傍帯状皮質という部分です。
前部傍帯状皮質は、相手の心を読み取る働きに関係があるとされています。
つまり同じチェスという行為をしている状況でありながら、相手が人かどうかで無意識のうちに脳の使い方が切り替えられているという言い方ができます。
だからといってこれがカウンセリングの効果に影響するのか…それは僕には正直分かりません。
前部傍帯状皮質が活動していなかったとしても、AIのカウンセリングを受けることで人が行うカウンセリングと同様の効果が得られる可能性もあるかもしれません。
ただ、この脳の活動をもう少し身近な言葉に置き換えてみると実感しやすい気もしました。
前部傍帯状皮質が働いていない状態を、我々人間の言葉に置き換えると「そうは言っても人間じゃないんだよな」とか「ふーん、AIはそういう回答をするのか」とか…やがては「やっぱり生身の人間と話したいな」とか。
これから数十年の時間とともにAIが生活に浸透していく中で、少しずつ「しょせん機械」という感覚は薄まっていくのではないかなと思います。
でも一方で、心の片隅で拭えない「でも人間じゃない」という感覚も根強いのではないかなと。
いつかドラえもんレベルで生命を感じる存在にAIがなると、人は前部傍帯状皮質まで活動し心から相談をしたり信頼をしたりといったことができるようになるかもしれません。
でもその時代がくるのは2055年よりは先ではないかな…それまでは人のカウンセラーでしか得られない距離感や信頼、人同士という関係がもつ本能的な強さのようなものが勝るのではないかな。
と、特に根拠はないながらも個人的に予想していたりします。
おわりに
というわけで今回は超個人的な予想として、AIとカウンセリングの今後について書いてみました。
正直なところ、かなり感覚的な話ですし普通に外れる可能性もあると思います。あまり真剣に捉えず、エンタメ的に読んで頂けると幸いです。
以前別のコラムでも紹介しましたが、専門家の10年先の予想はチンパンジーのダーツぐらいの正答率しかない、というアメリカの研究による指摘もあったそうです。
未来は誰にも分かりませんので…良い方にも悪い方にも外れる可能性があると思っておいた方が気楽なのかなと思ったりもします。
まの☆言葉と発達障害と心の専門家さん
この記事を書いた人:まの (まのぱぺ相談室代表)
【保有資格】
言語聴覚士 (国家資格) / 公認心理師 (国家資格) / 正規Keep Safeインストラクター修了
【主な経歴・実績 (臨床経験10年以上)】
- 元・看護専門学校 非常勤講師(リハビリ概論/言語・高次脳機能障害などを担当)
- 急性期病院での小児~成人リハ (失語症、嚥下、高次脳機能障害)
- 1歳~18歳までの支援 (発達障害、ことばの遅れ、吃音、緘黙、学習障害など)
- 重症心身障害児・者リハビリテーション
- 保育園へ毎月訪問し、保育士さんとの意見交換業務を継続中
- 学会での発表実績あり (令和8年も発表に向けて準備中!)

